~水稲単作地域における酪農経営の展開方策~
酪農部門 ㈲フジタファーム 代表取締役 藤田 毅
1.地域の概況
西蒲原郡岩室村は、新潟県の日本海側のほぼ中央の海岸地域に位置し、海、山、平野と自然に恵まれた環境にある。村の面積は36.1k㎡で、東西10.3km、南北4.9km、周囲39.9kmとなっており、水田が12.5k㎡(34.6%)、畑が1.5k㎡(0.4%)、森林が12.9k㎡(35.7%)を占めている。冬の積雪量は新潟県内では比較的少なく、新潟平野を利用したコシヒカリの産地であるが、酪農、林業、漁業も村の資産を生かした大切な産業となっている。特に、酪農は「岩室酪農」として県内の生乳生産拠点の一つとして発展して来ており、乳牛飼養頭数は県内全市町村では5番目、町村だけで見ると1番の頭数となっている。農業以外では、新潟市から車で1時間弱という立地条件を生かした観光が基幹産業となっており、400年の歴史を持つ岩室温泉と田ノ浦温泉の他、海水浴場を有し、年間の観光客は40万人を超えている。特に、岩室温泉は新潟県の芸妓発祥の地であり、イベントの多い温泉地としても知られている。今回推薦する有限会社フジタファームはこの岩室温泉まで徒歩で数分という、観光地に隣接した場所に位置し、父の時代から数えて50年の歴史を持つ酪農経営となっている。
(1)産業構造(平成7年)
区分 | 総数 | 産業別分類 | ||
第一次産業 | 第二次産業 | 第三次産業 | ||
就業人口 | 5,235人 | 533人 | 2,035人 | 2,667人 |
構成比 | 100% | 10.2% | 38.9% | 50.9% |
(2)農業粗生産額(平成7年)
(単位:万円)
農業粗生産額 | 畜産物 | 米 | 野菜類 | いも類 | 果実 | 花き | 豆類 |
267,800 | 51,400 | 193,000 | 19,800 | 1,400 | 1,200 | 600 | 400 |
100% | 19.2% | 72.1% | 7.4% | 0.5% | 0.4% | 0.2% | 0.1% |
(3)飼養戸数、頭数(平成15年)
(単位:戸数・戸、頭数・頭、羽数・百羽)
区分 | 乳用牛 | 肉用牛 | 豚 | 採卵鶏 | ||||
戸数 | 頭数 | 戸数 | 頭数 | 戸数 | 頭数 | 戸数 | 羽数 | |
県 | 408 | 13,315 | 437 | 16,069 | 216 | 220,680 | 43 | 32,165 |
岩室村 | 10 | 557 | 0 | 0 | 3 | 10,389 | 0 | 0 |
2.経営管理技術や特色ある取り組み
経営実績とそれを支える経営管理技術、 特色ある取り組み内容とその成果等 | 左記の活動に取り組んだ動機、背景、経過やその取り組みを支えた外部からの支援等 |
1.一貫した生産コスト低減対策による高収益経営の確立 平成3年にフリーストール牛舎に転換したが、つなぎ牛舎で経営を行っていた当時から生産費の大部分を占める飼料費、減価償却費、労働費の低減を経営目標として掲げ、経産牛40頭規模で1,500万円の所得を確保し(昭和62年実績)、収益性の高い経営を確立して自己資金の充実を図って来た。長年にわたるコスト低減への取り組みや自己資金の留保による結果が今日の法人化による積極的な経営展開へと結びついた大きな要因となっている。 2.シンプルでマニュアル化された飼養管理体系の構築 作業効率の良い畜舎のレイアウトや特殊な技術を要さず故障の少ない機械の選定、導入を行い、飼養管理体系をマニュアル化すると共に、常に生産コストを意識しながらも牛には無理な能力を追求しない経営方針のもとで、作業分担や責任の明確化により効率的な管理体制を構築している。 3.法人化による積極的、有機的な経営展開 本人は「フジタファーム」の代表取締役、「米工房いわむろ」と「レガーロ」の取締役として3法人の会計責任者を務め、酪農・稲作・乳製品加工販売の3法人による有機的な連携と一体的な経営展開により相乗効果を上げており、県内の先進的事例として高い評価を得ている。さらに、現在は搾乳体験やジェラート作り等乳製品加工体験施設、展示館、農産物直売店の建設を進め、本年8月にはオープン予定であり、地産地消の推進や消費者を意識した一層の多角化を目指している。 4.耕畜連携による有機栽培米の生産、販売 酪農経営では効率的なふん尿処理が環境問題解決のためには不可欠であるが、「フジタファーム」では水稲単作地域という立地条件を活かして、稲作生産法人「米工房いわむろ」との連携を図り、有機栽培米の生産に堆肥利用の活路を見出した。この農業法人同士が連携した地域循環型の取り組みは、水田地域での畜産経営が多い県内他地域への波及効果が大きく、研修に訪れる農業関係者が多くなっている。「米工房いわむろ」の水稲栽培面積は25haで、堆肥施用、減農薬栽培による米作りは食味が良く安全であることから、購入者の口コミによる広がりやリピーターの増加により本年は米が全て完売し、今後、栽培面積がさらに拡大する予定である。また、堆肥散布作業機は「米工房いわむろ」が所有し、自社の管理水田の他、地域の個人農家の要請に応じた堆肥散布作業を請け負っており、さらに11月~3月の農閑期に堆肥散布を行うことから、冬期間の従業員の作業労働の確保が図られている。 5.転作田を活用した飼料用稲の栽培、利用の推進 水稲単作地域にある酪農経営という土地条件を活かして、「米工房いわむろ」が受託した水稲栽培で生ずる転作田や地域の個人稲作農家の転作を活用し、輸入粗飼料に頼らない酪農経営を行うため飼料用稲ホールクロップサイレージの利用を開始し、イネ科の購入乾草を全て飼料用稲ホールクロップサイレージに切り替えて、搾乳牛、育成牛を含め1日に900kgの給与を行っている。従来、耕種農家側は飼料用稲の栽培管理だけを行う事例が多いが、「米工房いわむろ」は収穫・調製まで一貫して行っている。特に、食用稲との作期競合を回避するため、晩生品種(クサホナミ)の導入や北陸187号の一部作付け、さらに移植栽培、乾田直播栽培の組み合わせにより酪農家の要望に沿った糊塾期~黄熟期の収穫に対応し、利用する酪農家を意識した高品質の製品の供給を行っている。村内の酪農家では地場産の粗飼料を利用した生乳生産で自信を持って生乳を出荷できるという仲間意識が盛り上がりを見せており、こだわり牛乳としての「生産者指定牛乳」につながっている。来年度は転作田を利用した飼料用トウモロコシ栽培とラップサイレージ化による販売を予定しており、コントラクターとしての機能をさらに充実させて行く方向である。 6.自家産の生乳を活用した乳製品加工販売の実施 自家産の生乳に付加価値を付けて販売するため、無理をしない健康な乳牛から乳成分の高い生乳を生産するための改良を重ねて来た。その結果、生乳の乳成分は年間平均で、乳脂肪率4.05%、無脂乳固形分8.87%、乳たんぱく質3.39%という高成分乳牛に改良が図られ、これらの原料乳を毎朝、低温殺菌して利用することが可能となった。この新鮮で高品質な生乳が加工した際の風味を高め、多くの消費者の支持を得ており、平成16年は酪農部門の売上げを上回る勢いで販売額が伸び、順調に業績の向上を図っている。また、パニーニ(イタリアンサンドウィッチ)やブリオッシュアイス等、新製品の開発、販売にも積極的に取り組んでいる。 7.地域生産牛乳のブランド化による地産地消の推進 生産された生乳を地域6戸の酪農家で連携して、牛乳パックに生産者の顔をのせた「生産者指定牛乳」として販売している。自らジェラート店「レガーロ」でも販売する他、近くの岩室温泉のホテルでの販売、小学校の給食での利用について交渉を行い、行政や民間業者、生産者等地域一体となった地産地消の推進に尽力している。生乳生産を行っている酪農家でも地場産の飼料用稲発酵粗飼料利用を含めて、仲間意識が盛り上がりを見せており、消費者を常に意識した生乳生産につながって来ている。 8.消費者交流への積極的な取り組み 平成13年に酪農教育ファーム認定牧場となり、消費者の搾乳体験や農場視察の要望に応じ生産現場の理解促進に努めている。また、「レガーロ」ではジェラート作り体験や店舗視察への対応、羊、山羊とのふれあい施設の設置等により親子で楽しめる施設作りを行っており消費者重視の姿勢で取り組んでいる。平成16年には搾乳体験施設、乳製品加工体験施設や展示館、農産物直売店を建設して8月にはオープン予定であり、自分で搾乳した生乳をジュラートやチーズに加工する体験を実施する等消費者交流の拠点として一層の活性化を目指している。 9.消費者への情報発信への取り組み 消費者へ生産現場や製品情報を提供するため、インターネットホームページを開設して生産者の略歴、写真等を含めて紹介している他、製品の受注、販売をネット上で行っている。また、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等の様々なマスメディアを利用して積極的な情報提供に努めており、広く県内の消費者への浸透が図られ理解の促進につながっている。 10.組織活動への積極的な参加 父は村議会議員を経て、平成9年より地域酪農組合の組合長として活躍しており、本人は平成13年から新潟県農業法人協会副会長、平成14年から日本農業法人協会組織委員として責任ある立場で活動を展開している。特に、新潟県や全国の農業法人の連携や地域の個別農家との連携強化について積極的な推進に努めている。特に、地域内での堆肥の有効利用による地域循環型農業への組織化に連動して、個々の稲作農家に「米工房いわむろ」が栽培している食用稲の刈り取り作業を委託して、個々の農家が保有しているコンバインを有効活用すること等により自社のコスト低減を図りながら、地域全体としての組織化を進める取り組みを行っている。 | 1.経営の立地条件が新潟平野の水稲単作地域にあり、昭和60年代は水田の借地料が10a当たり5万円以上と高いため飼料畑の確保が困難で、さらに水田の排水条件が悪いため自給飼料生産の拡大による生産コスト低減が不可能であった。それでも2ha程度の牧草を栽培して来たが、昭和60年より畜産会の経営診断を受診し、自給飼料の生産コストの把握や有利性、コスト内容の分析により経営方針を明確化した。飼料費は未利用資源であった豆腐粕、ビール粕、稲わら等の混合飼料化による低減、減価償却費は電柱や間伐材を利用した手作りの牛舎、施設の建設や中古機械の利用、稲作部門と共用できる利用頻度の高い機械の導入、不用な機械は極力購入しない等で低減を図った。また、労働費は作業効率を考えた施設の設計、配置と管理体系の簡素化により低減を図っている。 2.妻や従業員に安心して飼養管理を任せられる体系を確立することが安定した生乳生産や家族、従業員の休日の確保には不可欠であることから、従業員の研修への参加、教育を積極的に実施すると共に、誰にでも出来るようなマニュアル化された飼養管理体制を構築している。 3.将来的に事業内容の継続性を確保し、多角的な経営展開を行い、若く優秀な人材を雇用して地域の活性化を図るため、平成3年に酪農部門の規模拡大を行い、有限会社「フジタファーム」として法人化した。その後、平成10年には米の生産部門を有限会社「米工房いわむろ」、平成15年には乳製品加工販売部門を有限会社「レガーロ」として法人化し、3法人で臨時雇用も含め18名の従業員を雇用すると共に、休日には1,000人を超える集客力で地域の活性化を図っている。 4.藤田 毅氏は昭和62年から「岩室村農業を考える会」や「稲作研究会」に参加し、地域の稲作農家の後継者との対話を通じて、将来的な水田の有効利用、堆肥の活用について検討を進めて来た。その中で、収穫量だけを追求した化学肥料、農薬に頼った、これまでの米作りから脱却し、消費者が安心して食べられる本物の米作りを目指すという目的を共有した水稲農家2戸と有限会社「米工房いわむろ」を平成10年に設立し、自分の水田2haの委託栽培を行うと共に、耕畜連携による堆肥の利用で食味の高い米や餅への加工を行い、地域での販売に加え、インンターネットを利用した全国各地域の消費者への直販を行っている。 5.平成12年に村行政より飼料用稲の栽培について村酪農組合に打診があったが、組合員内での調整がつかなかったことから、「フジタファーム」が率先して給与部分を受け持ち、「米工房いわむろ」が栽培することで6.4haの試験栽培を開始した。その結果、10a当たり乾物収量が990kgで発酵品質も良好であったことから、村が事務局となり「岩室村水田飼料作物利用促進部会」を設置して、飼料用稲の本作化に向けた支援体制を整備した。これらの県の先頭になっての取り組みにより、栽培面積は13年20.4ha、14年33.9ha、15年36.6haに拡大して常に県内トップであり、飼料用稲が転作田の活用を図る上で有効な作物であることが県内に浸透して来ている。「岩室村水田飼料作物利用促進部会」の調整により、村内10戸の全酪農家が乾物1kg当たり30円で購入して給与する体制が確立されており、生産量は全酪農家が1日1頭当たり平均6kgの給与量とした場合で半年分の飼料用稲ホールクロップサイレージが確保されている。一方、生産費は平成14年実績で乾物1kg当たりで移植栽培が24.5円、乾田直播栽培が24.8円となり今後は生産性の向上により、補助金がなくても運営できる体制を目指している。 6.自家産の生乳を活用し、何らかの形で消費者に提供できないか長年温めてきた構想を、平成8年に行った北海道の加工販売の成功事例視察を契機として本格的に検討を開始し、平成14年6月に牧場から200mほど離れた所にジェラート専門店「レガーロ」としてオープンさせた。その間、妻が本場イタリアでの研修と研究を重ね、現在は100種類以上のレシピを開発し、地元の低農薬、低化学肥料で栽培している農家から新鮮な果物や野菜を仕入れ、季節感のあるこだわりを持った多彩なメニューを提供している。平成15年4月には妻が代表取締役となり有限会社「レガーロ」として法人化し、土日には1,000人以上が来店する地域の人気店に成長し、法人1期目の平成15年度は5,000万円を売り上げ、現在はさらに売上げを伸ばしている。 7.食に対する安全性が求められている中で、生産者を限定し飼料用稲サイレージを給与している「フジタファーム」を含む6戸の酪農家の生乳を平成13年7月に「生産者の顔がみえる牛乳」として新潟県農協乳業が製品化し、平成14年2月に「生産者指定牛乳」と改名して県内のスーパー、百貨店等でこだわり牛乳として販売している。また、14年5月から同じ原料乳を「岩室牛乳」として、村内の小学校2校の給食用に供給しており、販売本数は平成13年5万本、14年24万本、15年36万本と増加し,製造している農協乳業でも販売量拡大に力を入れている。 8.乳製品や米の販売を通じ、消費者意識の把握や顧客管理、優良な消費者の選別方法開発の必要性を感じ、消費者との交流の重要性を認識して積極的な交流に努めている。また「フジタファーム」「レガーロ」「米工房いわむろ」が一体となり、「いわむろ農業体験村」を平成14年5月に設立し、女優の「日色ともゑ」さんを春秋の農作業に招いて田植え体験、ジェラートの製造見学や試食等のイベントを実施している。 9.消費者に対し経費をかけないで情報提供を行い、効果を上げる方策を検討し、テレビ、新聞等のマスメディアをうまく活用している。また、日本農業法人協会が実施する農業技術等情報提供支援活動「あぐりファン倶楽部」に参加し、水稲の生育状況をオンラインの画像データとして提供している他、イベント情報等の提供を行っている。 10.畜産の活性化を図るため、就農当初から酪農青年部活動や県の家畜改良委員等様々な畜産関係の組織活動に参画すると共に、畜産の枠を越えた「岩室村農業を考える会」の月1回の定例会や青年農業士活動に積極的に行い、地域農業全体の活性化や発展を考えた活動を行い着々と成果を上げて来ている。 |
3.経営・活動の内容
(1)労働力の構成
有限会社 フジタファーム 平成16年7月現在
区 分 | 続柄 | 年齢 | 農業従事日数 | 年 間 総労働時間 | 労賃単価 | 備 考 (作業分担等) | |
うち畜産部門 | |||||||
構成員 (役員) | 本人 | 47 | 300 | 300 | 600 | - | 堆肥化処理、販売 |
妻 | 47 | 60 | 60 | 60 | - | 教育ファーム関係 | |
弟 | 45 | 270 | 270 | 1,890 | - | 経営全般、飼料給与 | |
常 雇 | 男性 | 29 | 275 | 275 | 1,925 | 1,320円 | 搾乳、人工授精、飼料給与 |
女性 | 25 | 275 | 275 | 1,925 | 1,130円 | 搾乳、哺育育成管理、削蹄 | |
女性 | 20 | 275 | 275 | 1,925 | 1,000円 | 搾乳、哺育育成管理、削蹄 | |
臨時雇 | のべ人日 人 | ||||||
労働力 合 計 | 6人 | 1,455日 | 1,455日 | 8,325 時間 |
有限会社 レガーロ 平成16年7月現在
区 分 | 続柄 | 年齢 | 農業従事日数 | 年 間 総労働時間 | 労賃単価 | 備 考 (作業分担等) | |
うち畜産部門 | |||||||
構成員 (役員) | 本人 | 47 | 200 | 200 | 400 | - | 牛乳運搬、経理全般、 対外交渉、応対 |
妻 | 47 | 330 | 330 | 2,640 | - | 仕入、製造、販売、 労務管理、教育ファーム | |
母 | 67 | 280 | 280 | 280 | - | 環境整備 | |
父 | 70 | 0 | 0 | 0 | - | 無報酬 | |
常 雇 | 女性 | 34 | 240 | 240 | 1,680 | 平日850円/時 土日1,000円/時 | 販売 |
女性 | 26 | 240 | 240 | 1,680 | 平日950円/時 土日1,100円/時 | 製造 | |
女性 | 23 | 240 | 240 | 1,680 | 平日850円/時 土日1,000円/時 | 販売 | |
女性 | 24 | 140 | 140 | 560 | 平日850円/時 土日1,000円/時 | 製造 | |
女性 | 24 | 140 | 140 | 560 | 平日850円/時 土日1,000円/時 | 製造 | |
臨時雇 | 高校生6人 のべ人日 312人 | 1,248 | 土日のみ 700円/時 | 販売 | |||
労働力 合 計 | 9人 | 1,312日 | 1,312日 | 7,408 時間 |
(2)収入等の状況
平成14年6月~平成15年5月
区 分 | 種 類 品目名 | 作付面積 飼養頭数 | 販売量 | 収 入 構成比 | |
農業生産部門収入 | 畜 産 | 生乳 | 経産牛75.9頭 | 595,709kg | 53.1% |
子牛 | 42頭 | 2.1% | |||
堆肥 | 0.3% | ||||
% | |||||
耕種 | 役員報酬 | 3.8% | |||
% | |||||
林産 | % | ||||
% | |||||
加工・販売 部門収入 | レガーロ:乳製品 (第一期実績) | 15年4月~ 16年3月 | 39.5% | ||
% | |||||
% | |||||
% | |||||
農 外 収 入 | その他報酬 | 1.2% | |||
% | |||||
合 計 | % |
(3)土地所有と利用状況
区 分 | 実 面 積 | 備 考 | ||||
うち借地 | うち畜産利用地面積 | |||||
個 別 利 用 地 | 耕地 | 田 | (200)a | 0a | 0a | 父親所有 |
畑 | (15)a | 0a | 0a | 父親所有 | ||
樹園地 | a | a | a | |||
計 | a | a | a | |||
耕地以外 | 牧草地 | a | a | a | ||
野草地 | a | a | a | |||
a | a | a | ||||
計 | a | a | a | |||
畜舎・運動場 | 900a | 900a | 900a | 父親所有 | ||
その他 | 山 林 | a | a | a | ||
原 野 | a | a | a | |||
計 | a | a | a | |||
共同利用地 | a | a | a | 利用戸数: |
(4)家畜の飼養状況
品種・区分
|
ホルスタイン
経産牛
|
ホルスタイン
未経産牛
|
ホルスタイン
育成牛
|
ホルスタイン
子牛
|
期 首
|
70
|
16
|
12
|
3
|
期 末
|
77
|
7
|
24
|
3
|
平 均
|
75.9
|
11.7
|
18.7
|
-
|
年 間 出 荷
頭(羽)数
|
13
|
0
|
0
|
42
|
(5)施設等の所有・利用状況
①所有物件
種 類 | 棟 数 面積数量 台 数 | 取 得 | 所 有 区 分 | 構 造 資 材 形式能力 | 備 考 (利用状況等) | ||
年 | 金額(円) | ||||||
畜 舎 | フリーストール舎 パーラー舎 子牛舎 | 1,168㎡ 244㎡ | H3.12 H3.12 H6.7 | 16,600,000 8,940,000 1,045,868 | 法人 法人 法人 | 電柱、間伐材 木造 木造 | |
施 設 | 堆肥舎 堆肥舎 堆肥舎 堆肥投入槽 | 178㎡ 148㎡ 53㎡ | H4.3 H6.1 H8.10 H13.4 | 5,580,000 485,437 615,735 1,400,000 | 法人 法人 法人 法人 | 電柱 電柱 電柱 コンクリート | |
機 械 | パーラー コンプリート フィーダー 換気設備 細霧システム ローダー ショベルカー 堆肥セパセータ 軽トラック 乗用車 | 6頭ダブル 5㎥ 一式 一式 1台 1台 1台 1台 1台 | H3.12 H5.10 H5.5 H12.8 H9.5 H14.11 H13.5 H5.1 H1.7 | 12,287,596 1,025,000 1,617,100 1,550,000 2,200,000 1,800,000 4,391,400 669,500 1,310,700 | 法人 法人 法人 法人 法人 法人 法人 法人 法人 | 自動離脱付 自走式 換気扇 ドライフォグ ボブキャット 1.2㎥ |
②リース・賃借物件
種 類 | 棟 数 面積数量 台 数 | 取 得 | 所 有 区 分 | 構 造 資 材 形式能力 | 備 考 (利用状況等) | ||
年 | 金額(円) | ||||||
畜 舎 | |||||||
施 設 | 堆肥舎 | 386㎡ | H12.3 | 10,050,000 | 法人(環境リース) | 鉄骨 | |
機 械 | バルククーラ ミルカー自動離脱装置 | 1台 12台 | H11.8 H12.3 | 4,200,000 5,775,000 | 法人(近代化リース) 法人(効率化リース) | 3,000㍑ ミルクマスター |
(6)経営の推移
年 次 | 作目構成 | 頭(羽)数 | 経営および活動の推移 |
S28 S47 S48 S54 S55 S56 S57 S58 S59 S60 | 水稲 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪 | 育成牛1頭 経産牛15頭 経産牛24頭 経産牛35頭 経産牛36頭 経産牛36頭 経産牛36頭 経産牛38頭 経産牛40頭 経産牛40頭 | 父が1頭の育成牛から酪農開始する。 以降、人工授精師業務を行いながら作業場の改造等により順次、増頭を図る。 酪農団地建設の検討を開始する。 3戸の酪農団地を建設し、34頭収容牛舎に移る。 父が酪農団地の組合長となる。 青色申告を開始する。 牛舎を増築して44頭収容に拡大する。 牛群検定事業に参加する。 本人、帯広畜産大学卒業し北海道長沼町の向牧場での実習に入る。 父が指導農業士に認定され、県農業大学校生の研修生受け入れを開始する。 本人、北海道での実習を終え就農し、人工授精を担当する。 乾乳牛舎を建設する。 本人、青色申告の担当を開始する。 日航国際線客室乗務員であった妻と結婚する。 長女誕生、格納庫を建設する。 本人、青年農業士に認定され、高校生の体験農家となる。 中国からの研修生を受け入れる(6ヵ月間)。 育成舎建設、父が訪米する。 長男誕生、本人・妻訪米、父・母訪中する。 本人、経営全般の担当を開始する。 生卵によるET牛誕生、水田20aを購入する。 |
S62 S63 H2 H3 H4 H5 H9 H10 H12 H13 H14 H15 H16 | 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 酪農 酪農 酪農 酪農・乳製品販売 酪農・乳製品販売 酪農・乳製品販売 | 経産牛37頭 経産牛44頭 経産牛43頭 経産牛54頭 経産牛69頭 経産牛74頭 経産牛75頭 経産牛75頭 経産牛75頭 経産牛75頭 経産牛75頭 経産牛75頭 経産牛75頭 | 父・母訪ソ、育成牛舎、共同堆肥舎を建設する。 全国酪農青年婦人酪農経営発表大会で関東甲信越代表として経営発表する。柿の栽培を中止する。 堆肥舎を建設する。 有限会社「フジタファーム」を設立する。 フリーストール牛舎を建設し、パーラー搾乳を開始する。 自給飼料作物栽培を中止する。 堆肥舎を建設する。 フリーストール牛舎に暑熱対策として換気扇20個を設置する。 父が地域酪農組合の組合長となる。 有限会社「米工房いわむろ」を設立する。 飼料用稲ホールクロップサイレージの栽培、給与を開始する。 環境リース事業により堆肥舎建設する。 酪農教育ファームに認証される。 本人、新潟県農業法人協会副会長に就任する。 ジェラートの店「レガーロ」を建設し、自家産牛乳を利用したジェラート製造・販売を開始する。 本人、日本農業法人協会組織委員に就任する。 村内で飼料用稲ホールクロップサイレージを給与している6戸の酪農家の生乳を生産者の顔が見える「生産者指定牛乳」として販売が開始される。 「レガーロ」を有限会社として法人化する 搾乳体験施設、教育ファーム用展示館、農産物直売店の建設を行う。 |
4.家畜排せつ物処理・利用方法と環境保全対策
(1)家畜排せつ物の処理方法
①固液分離処理の状況
混合処理
②混合処理
フリーストール牛舎よりローダーで堆肥舎に搬出後、戻し堆肥、モミガラを混合して切り返し方式により堆肥化する。気候条件の悪い時には固液分離機を活用して水分を低減した後、堆肥化処理を行う。2ヵ月前後で製品となった堆肥を有限会社「米工房いわむろ」が有機質肥料として水田に散布する他、2tダンプ1台2,000~4,000円で近隣農家に販売している。
(2)家畜排せつ物の利活用
①固形分
内 容
|
割合(%)
|
品質等(堆肥化に要する期間等)
|
販 売
|
30
|
切り返し方式により2ヵ月で堆肥化
|
交 換
|
|
|
無償譲渡
|
70
|
切り返し方式により2ヵ月で堆肥化
|
自家利用
|
|
|
そ の 他
|
|
|
(4)評価と課題
①処理・利活用に関する評価
様々な堆肥化処理方式を実際に視察、研修した中で、コストが安く機械の故障が少ない切り返し方式を採用し、順次、電柱や間伐材を利用した低コストの堆肥舎を建設して適切な処理を行っている。副資材として利用している籾殻は農業生産組合や近隣の耕種農家から無償で調達しており堆肥化処理コストも抑える努力を行っている。
一方、利用面においては、水稲単作地域という立地条件を活かして、有機栽培米の生産に活用し「いわむろこしひかり」「黄金餅」といったこだわりの商品の生産に結び付けると共に、飼料用稲の栽培にも活用し安全な国産粗飼料の増産を図り、地域循環型農業を確立している。
さらに、堆肥散布機の保有や散布作業は耕種農家法人「米工房いわむろ」に任せ、堆肥化処理、利用における一貫した作業体制を構築すると共に、堆肥が水稲栽培には欠くことの出来ないものであるという認識を地域の耕種農家や消費者に植え付けた功績は高く評価できる。
新潟県では水稲単作地域に立地している酪農経営が多くなっているが、堆肥の利用を通じた耕種が連携した取り組みにより、転作田を活用して十分な粗飼料が確保でき、酪農経営が成立、発展できるという先進事例としての評価も高いものがある。
②課 題
特になし
(5)畜舎周辺の環境美化に関する取り組み
- 畜舎が岩室温泉街の近くにあることから、悪臭の発生防止を図るため細霧システムに消臭剤を混合して畜舎内に散布し、悪臭の低減を図っている。
- 植樹、花の栽培等により畜舎環境の美化と景観向上に努めている。
- 畜舎より200m程離れた所に建設した「レガーロ」の周辺を整備し、消費者に家畜とのふれあいのできる施設等潤いの場を提供し好評を得ている。
5.後継者確保・人材育成等と経営の継続性に関する取り組み
- 娘が来年、大学を卒業して当法人に就職し、教育ファームの業務に従事する予定であり、事業内容の拡 大により一層の発展が見込まれる。
- 従業員には、法人協会の研修会、人工授精師会の全国研修会、各メーカーの研修会等出席可能な研修会には積極的に参加させ、従業員個々の能力向上に努めている。
- 従業員の融和を図るため、3法人の従業員による様々なイベントを企画し、労働意 欲の向上に結びつけている。
- 一般的に農業生産法人は役員と従業員の年代較差が大きくなって来ているところに経営継続性の問題が生じていると考えており、従業員待遇の向上(昇給の実施、賞与、住宅手当、通勤手当の支給、退職積立の実施等)により魅力ある職場作りを行うと共に、従業員採用試用期間を設けて優秀な人材を確保し、10年、20年後を見据えた取り組みを行っている。
6.地域農業や地域社会との協調・融和についての活動内容
- 酪農、稲作、乳製品加工販売の3部門を法人化し、地域農家、若い農業後継者、消費者を巻き込んだ活 動を展開している。また、本人は新潟県農業法人協会副会長として県全体の農業の活性化に努めている 他、地域の酪農、稲作を含めた農業全体のリーダー的存在として農業全体の活性化に尽力している。ま た、父は平成9年より地域の酪農組合の組合長として酪農の発展に貢献して来ている。
- 地域の耕種農家法人「米工房いわむろ」と連携して「フジタファーム」の堆肥を活用した有機栽培米の生産により地域循環型農業を推進する共に、地域内の個人の耕種農家に対して堆肥散布業務の請負や飼料用稲の栽培、食用稲の刈り取りを委託する等個人農家とも連携を強化し、地域内での組織の拡大に努めている。近年、化学肥料に頼った水田の地力が著しく低下して来ており、堆肥散布による土作りの重要性が地域の耕種農家に浸透し、地域全体の取り組みに広がりを見せている。
- 転作田を活用した飼料用稲の栽培とホールクロップサイレージの村内の全酪農家での利用を村行政と一体となって推進し、酪農家も地場産の粗飼料を利用した生乳生産で自信を持って生乳を出荷できるという仲間意識が盛り上がりを見せている。水田単作地域における安定的な国産粗飼料確保の先進的なモデル事例として様々な情報誌で紹介され、県内外からの視察も多く波及効果を生んでいる。
- 搾乳体験、乳製品加工体験、田植え体験等の消費者を対象とした様々なイベントを開催している他、羊、山羊、ポニー等とのふれあいや、酪農教育ファームとして子供に対する畜産教育、食農教育を通じて積極的に畜産への理解を深める活動を実践している。
- ジュラート専門店「レガーロ」を開店し、自家産の生乳を利用したジェラート製造、販売やイタリアンコーヒー、パニーニ、ブリオッシュアイス等の新製品の開発にも積極的に取り組んでいる。また、有機栽培米等の農産物直売店も「レガーロ」の隣接地に建設して本年8月にオープン予定であり、畜産物だけでなく農産物全体に広がりを持った消費者に顔の見える地産地消への取り組みを展開している。さらに、「生産者指定牛乳」の生産、販売にも尽力し、地域の小学校の給食用牛乳への採用や近くの岩室温泉での販売による販路拡大に努めている。
- 自分が取締役を務める「フジタファーム」「レガーロ」「米工房いわむろ」という3つの法人で臨時雇用も含めて18人の雇用を行い、新規就農希望者の受け入れを積極的に行うと共に、研修生の受け入れにも対応している。また、国立大学にも講師として招かれる等幅広く担い手育成に取り組んでいる。
- 他地域の酪農組合や農協婦人部の視察研修先とし、飼料用稲栽培の取り組み、堆肥の活用による有機栽培米の生産販売、フリーストール体系の成功例、乳製品の加工販売等様々な要望に対する研修に積極的に対応し、情報交流を通して県内の酪農、農業の活性化、生産意欲の向上に貢献している。
7.今後の目指す方向性と課題
- 酪農経営においては経営のリスクを分散するため、輸入飼料価格や導入牛価格の変動の影響を回避することが今後の課題と考えている。そのため、自身も参画している耕種組織「米工房いわむろ」を活用した飼料用稲の栽培拡大やロールラップ調製による飼料用トウモロコシの栽培を来年度から計画している。将来的には牧草生産も視野に入れて、粗飼料は全量自給を目標とし、安全な国産粗飼料を利用した生乳生産を目指している。また、乳牛については全て自家育成牛とするため、育成牛舎の改築について検討を始めている。
- 農畜産物販売においては地産地消の一層の推進が課題と考えている。そのため、消費者への理解をさらに進めるため、搾乳体験施設や加工体験施設、展示館、農産物直売店の建設を行っており、本年8月にオープンする予定である。現在も実施しているジェラート作り体験の他、今後、チーズ作り体験や休日の餅つき大会を計画している。直売店では有機栽培米、加工餅の販売の他、ジェラートに利用している地域の有機野菜、果物の販売や体験水田の貸し出し等を検討している。娘が来年、大学を卒業して教育ファームを担当する予定であるので、若者らしい発想でさらに新しい農産物の加工、販売を進め行きたいと考えている。
- 地域との連携においては観光とのタイアップが必要と考えている。そのため、近くの岩室温泉の観光客を取り込み、販路拡大を図ることが重要であると考え、ホテル、旅館の経営者を招いたイベントの開催や牛乳、乳製品、農産物の販売を進めて行くよう検討している。
- 消費者対策では経費をかけず効果を上げるPR方法の検討が課題と考えている。そのため、テレビ、ラジオ、新聞等マスコミの積極的な活用や顧客管理の徹底と優良な顧客の選別方法の開発を早急に進め、ターゲットを絞った販売戦略により効果を上げる方策を検討している。