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【17年度】和牛を肥育して32年・最愛の人に ありがとう

肉用牛 肥育経営
漆間 平・マリ子

1.地域の概況

「位置」村上市は新潟県の北部岩船郡のほぼ中央にある。緯度は、北緯38°11′から38°21′東経139°25′から130°40′にあり、東西23km、南北21kmで総面積は142.12k㎡を有し人口は30,738人である。
「立地条件」西は日本海、東は越後山脈を背にして山形県に接する中山間地であり、気候は年間の平均気温13.3℃、月平均降水量は217mmで年間降水量は2,605mm 余りである。
「土地面積・畜産の状況」農家戸数は843戸、農家人口は2,810人で経営耕地面積は1,120 haであり内水田は904 ha、畑217 haである。畜産は黒毛和種肥育牛農家が12戸、養豚農家2戸、採卵鶏農家1戸、飼養頭羽数は肉牛337頭、豚2,388頭、採卵鶏633千羽である。
「地域産業」産業は、農水産業と温泉地を中心とする観光業や堆朱等の伝統工芸品がある。農業はコシヒカリを主体とする稲作が基幹的作物として、他にネギなどがある。お茶は産業としての北限にあり村上茶として生産されている。肉用牛はにいがた和牛「村上牛」として主要生産物である。 農業産出額は、2,276百万円でこの内米は1,166百万円、次いで畜産の779百万円、蔬菜は203百万円、花卉57百万円などである。
(数値は国勢調査、農林水産統計年報、新潟県家畜頭羽数集計表)

2.経営・生産の内容

(1)労働力の構成

区  分
続柄
年齢
農業従事日数
年間
総労働時間
労賃単価
備  考
(作業分担等)
 
うち畜産部門
 
本人
53
350
330
1,437
1,400
全般
 
53
330
330
1,095
1,400
飼養管理
家  族
長男
26
50
30
180
1,400
農外(飼養管理)
 
二男
19
0
0
 
 
農外
 
85
0
0
 
 
 
 
77
200
0
 
 
 
常  雇
 
 
 
 
 
 
 
臨時雇
のべ人日            1人4日
20
1,000
 
労働力
合 計
4人
934日
694日
2,732
 時間
 

(2)収入等の状況

平成16年1月~12月
区  分
 
種  類
品目名
作付面積
飼養頭数
販売量
収 入
構成比
農業生産部門収入
畜 産
黒毛和種肥育牛
76.9頭
41頭
91.7%
 
 
 
 
 
 
耕種
水稲
285 a
11,740 kg
6.9%
ユリ球根
20 a
15,880 球
1.4%
林産
 
 
 
 
 
 
加工・販売
部門収入
 
 
 
 
 
 
農 外
収 入
 
 
 
 
 
 
合 計
 
 
 
100%

(3)経営・技術等の実績

(4)自給飼料の生産と利用状況

平成16年1月~12月
使用
区分
飼料の
作付体系
地目
面 積(a)
所有
区分
総収量
(t)
10a当たり
年間収量
(t)
主 な
利用形態
(採草の場合)
実面積
のべ
面積
 
採草
 
 
採草
 
 
イタリアンライグラスA
 
 
イタリアンライグラス
 
 
 
 
40a
 
 
  60a
 
 
 
80a
 
 
120a
 
自己
 
 
借地
 
14.4t
 
 
21.6t
 
3.6t
 
 
3.6t
 
1番草:乾草
2番草:乾草
 
1番草:乾草
2番草:乾草
 
 
 
100a
200a
 
36.0t
3.6t
 

3.経営実績の特徴

1 経営の確立と管理技術の向上
(1)内助の功と工夫を重ねた飼養管理
経営は、村上牛の黒毛和種肥育牛85頭、岩船米の水稲280a、畑作20aの複合経営である、中山間地の当地域の個人経営では比較的大型経営である。
当地域には肥育牛農家が15名いるが殆んど経営主1人での飼養管理が多く、ともすると日常管理に見落としが見られ経営成果に結びつかないことがある。
当該経営では、本人と妻二人で専業農業を営んでいるが、妻は単に労働提供者ではなく最も信頼の出来る良きパートナーとして、時には会長職等で多忙な本人に代わり日々牛舎内の細部まで目配りして、飼育管理にあたり成果を上げてきた。
管理上の工夫としては、事故発生の要因となるストレスを防ぐために牛舎の開放や換気扇を使っての換気、牛床面積を1頭当り6.6㎡と広く取り、仕上げ期は飼養群を2頭と少なくして飼養し、飼料は1頭毎に設置したドラム缶を使った飼槽で給与、給水は飼槽と飼槽の間に設置したウォーターカップで不断給水するなど諸施設の環境整備をしている。
 
15年、16年去勢牛の技術数値
区 分
枝肉重量
区 分
格付4等級以上率
15年
16年
15年
16年
当該経営
450 kg
460 kg
当該経営
80.6 %
81.8 %
村上牛生産者平均
445 kg
450 kg
村上牛生産者平均
66.4 %
68.3 %
 
(2)確実な経営管理
平成元年からパソコンを導入して、経営管理を行い青色申告に繋げて無駄をなくする努力を行っている。電柱と自家労力を使って低コスト牛舎の建設や1/2補助金付きリース事業で堆肥舎を建設した。また、機械は保守管理をきちんと行いトラクタやヘイベーラのように購入後23年間使用するなど設備投資を抑えて無理のない経営を行っている。更には、インターネットを使い情報収集し先進技術の導入や経営判断の参考にしている。
2 村上牛枝肉の高品質化と付加価値化の実現
(1)枝肉の高品質と安定への努力
品質向上は販売収入を上げ経営成果に繋がることから、次のことに努力してきた。
ア 牛舎内の環境悪化は、増体量の低迷や枝肉の品質低下になるので、自らの目で選定した飼養牛が持っている能力を発揮出来るよう牛舎内環境を整えている。
イ 給与飼料は自家配合を主体に給与してきた。規模を拡大するにつれ合理的で安定した飼料を模索して来たが、村上牛生産者間にも同じ思いがあり、生産者をリードして、JAグループと協力し合いながら飼料設計と給与マニュアルを作成して、平成11年から検討を重ねながら給与試験を行い、平成14年に「村上牛配合」を仕上げて、信越くみあい飼料(株)が供給を開始し、以後平成16年まで成果を見ながら内容の充実をさせてきた。成果としては枝肉重量増加と格付率向上が図られた。
(2)地域銘柄「村上牛」の立上げと確立への努力
昭和62年に市内の和牛肥育仲間が結束して、和牛肥育集団「村上市和牛振興組合」を設立して、東京食肉市場に出荷を開始したが、品質不足と無銘柄のために販売価格が上がらず経営成果に結びつかなかった。これに対処するために同組合が中心となって働きかけを行い、農協系統の主導で平成元年に村上市・岩船郡内6農協と市町村、県経済連が構成メンバーとなり村上牛生産協議会を設立して、地域銘柄「村上牛」を立ち上げた。平成8年には黒川村が加わり一層の量増加と質が高められた。
この間、昭和62年~平成5年までは村上市和牛振興組合の前会長を支えて、平成6年~16年まで組合長として村上牛の枝肉品質向上に努力した。平成15年には、県内統一ブランド「にいがた和牛」立上げに尽力した。平成16年2月1日現在の村上牛生産者数は58戸、飼養頭数は1,471頭で頭数は県内の40%余りを有している。生産者1戸当りの平均飼養頭数は25.4頭である。
3 耕畜連携の循環型農業推進と安全な稲わら収集を実現
(1)稲作生産集団設立と稲わら収集、堆肥の土地還元
当市と岩船郡内は、地域銘柄「岩船米」の産地であり、平成10年に水田圃場整備が行われ、整備後も品質の高い「岩船米」を生産していくのに、地力維持のため有機質肥料を施す必要性から、平成14年7名で水田13 haの水稲生産組織(こがね会)を設立した。当該経営は、刈取り後稲わらを収集し、堆肥を散布して地力の増進と安全で低コストの稲わらの確保を実現した。
4 地域活動
(1)地域肥育経営後継者の育成と県内中堅肥育農家の研修受け入れを実施
新潟県の担い手育成に関する事業で、平成14年~15年度は、新規農業者支援事業で、和牛肥育経営後継者を研修生に受入れて、基本的肥育技術を研修させるなど肥育経営後継者育成をおこなった。
平成16年度は、にいがた和牛肥育名人認定事業の肥育名人の認定を受けて、中堅肥育農家に対して高度な肥育技術を伝えるなど県内の肥育技術の高位平準化に貢献している。
(2)児童の情操教育と消費者交流の実施
地域小学校児童の情操教育の場として、当農場を訪問し牛とふれあいさせて、牛の一生について話して聞かせている。児童は学校に帰り牛とのふれあい体験の内容を実習のなかでホームページに掲載した。
このホームページを開いた県内のテレビ局が、当該経営者を訪れ村上牛の生産実態を取材し後日放映された。
畜産関係機関・団体が主催する消費者交流会訪問先農場として協力し、消費者に生産現場から安全な牛肉の生産状況をアピールした。
また、当該経営は優れた村上牛生産農家であることから、肥育農家や消費者の視察や見学者が多く訪れている。これらに対しては、丁寧に接しているが常に来訪者の事故防止や農場の防疫面での気配りを怠たらない。
(3)地域の家畜排せつ物適正化処理の推進
村上市が設置した、市、県出先機関、JA、畜産団体組織、畜産農家、耕種農家等で構成された村上市家畜排せつ物対策協議会に村上市和牛振興組合を代表し参加し平成13年に当協議会長に就任して、広域的な家畜排せつ物処理対策と堆肥利用について検討、協議した。また、畜産農家の家畜ふん尿処理実態の巡回調査と指導を行い、家畜排せつ物の適正化処理の推進に貢献した。

4.経営の歩み

(1)経営・活動の推移

年 次
作目構成
頭(羽)数
経営および活動の推移
S45
 47
 
 51
 52
 59
 
 
 62
 
H 1
  2
  3
  6
 
 10
 11
 
 
 
 13
 
 14
 
 
 
 
 15
 
 
 
 
 
 16
水稲180a
水稲180 a
葉タバコ60a
  〃
  〃
  〃
 
 
  〃
 
  〃
水稲300a
  〃
葉タバコ中止
ユリ根60a
  〃
  〃
 
 
 
  〃
 
  〃
 
 
 
 
ユリ根20a
採草地100a
 
 
 
 
  〃
 
肥育牛 20頭
 
肥育牛 50頭
肥育牛 50頭
肥育牛 50頭
 
 
肥育牛 50頭
 
肥育牛 50頭
肥育牛 50頭
肥育牛 85頭
肥育牛 85頭
 
肥育牛 85頭
肥育牛 85頭
 
 
 
肥育牛 85頭
 
肥育牛 85頭
 
 
 
 
肥育牛 85頭
繁殖牛  2頭
 
 
 
 
肥育牛 85頭
県立高等学校農業科を卒業し就農する。
後継者育成資金を借りて肥育舎を建設して、黒毛和種肥育経営を開始する。
肥育舎を増設し規模拡大を行う。
結婚する。
古電柱と自家労力を使って、低コスト肥育舎を増築して収容面積を多くし、1房当りの頭数を少なくして肥育環境の改善を図る。
村上市農協肉牛青年部会長に就任、村上市和牛振興組合に参画し村上牛の産地化、銘柄化に務める。
地域銘柄「村上牛」を確立する。
地域青色申告会副会長に就任し推進を図る。
肥育牛舎を増築し規模の拡大を図る。
村上市和牛振興組合長就任以後10年間務める。
この間村上牛の生産振興と品質向上に努力する。
水田の圃場整備がなされる。
肉用牛生産基盤安定化支援対策事業で、村上牛統一給与配合飼料の造成のための給与試験を開始し14年まで生産集団代表として、クループ員をまとめながら継続実施する。
村上市家畜排せつ物対策協議会会長に就任する。
地域5JAが合併しJAにいがた岩船が誕生する。
村上牛統一給与配合飼料「村上牛配合」供給が開始された。以後16年3月まで更に給与試験を行う。
圃場整備を契機に7人で水稲生産組織を設立し副会長に就任し収穫の共同化を図る。
畜産環境整備リース事業で堆肥舎を建設する。
繁殖牛(経産牛)を導入して、子取り技術を試みている。ユリ根畑を減らし借地と併せ牧草を作る。
新潟県の新規農業者支援事業で研修生受入実施する
村上市和牛振興組合長として、村上牛を新潟県統一ブランド「にいがた和牛」への統一化に尽力する。
新潟県指導農業士に認定される。
合併で統一されたJA肉牛部会の役員に就任する。
にいがた和牛推進協議会事業のにいがた和牛肥育名人に認定される。

(2)現在までの先駆・特徴的な取り組み

経営・活動の推移のなかで先駆的な取り組みや他の経営にも参考になる特徴的な取り組み等
取り組んだ動機、背景や取り組みの実施・実現にあたって工夫した点、外部から受けた支援等
1 専業農業への道
  複合専業農業を目指して黒毛和種肥育経営を開始した昭和47年当時は、水稲180a葉タバコ60a、肥育牛20頭であった。
  昭和52年に結婚し現在に至る間は内助の功があって、現在のように専業農業への道を進むことが出来るようになった。
 
 
2 黒毛和種肥育経営の前進
  • 生産コストの低減
  和牛肥育経営は、サイクルが長く多くの資金を要し資金の流動も遅い。このため生産コストの高低は経営に大きく影響する。
これに対応し次ぎの2点を実行してきた。
 ①飼養牛の事故防止:飼養牛には、持っている能力を充分に発揮させこそ肉量を多くし、品質を高めてことが経営を安定させることをと認識した。それには、飼養環境整備が最も大切と実感し、夏場、冬場の気候変動を和らげるために敷料の交換度合いや換気対策を行った。この他に群飼の牛房内で飼養牛の競合を避け事故を防止するため1頭当りの牛床面積を6.6㎡と広くした。特に仕上げ期は1群2頭と群を小さくした
 ②牛舎の建設費や堆肥舎の建設費は、安い資材や助成金で施設投資を極力削減した。
  また、機械は減価償却済みの物を自身で修理しながら長く使い。運転資金は低利資金を利用して経費の節減に繋げている。
 
 
 
 
 
 
(2)経営管理と情報の収集
  パソコンで経営管理しインターネットで情報収集して、先進技術の導入や経営の合理化を図っている。
 
 
3 枝肉の有利販売と品質向上の推進
  黒毛和種肥育は、高級牛肉を作りいかに有利に販売できるかが経営戦略であって、これを可能に出来るように62年に設立した肥育生産集団村上市和牛振興組合が中心的役割を果たして、地域6農協、市町村、県経済連で組織する村上牛生産協議会で、平成元年に地域銘柄村上牛を確立させた。
 <当該経営の各種枝肉共励会の成績>
 H2年 村上牛枝肉共奨励会最優秀賞受賞
 H8年 全国肉用牛枝肉共励会 雌牛の部
    優秀賞受賞
 H15年 :村上牛枝肉共励会最優秀賞受賞
  また、村上牛の枝肉品質向上のために地域生産者夫々が試行錯誤を重ねながら牛作りに努力してきた。その中で、常に高成績を上げて来た当該経営が中心となって、枝肉の品質向上と斉一化を図れるための配合飼料作りを提唱して、平成11年に給与試験を開始して、平成14年に「村上牛配合」を作り上げた。
  この給与試験と検討会議をリードして、実現に努力してきた。
4 耕畜連携で循環型農業を推進
  平成10年水田の圃場整備後地力増強のため堆肥の需要が高まってきて、平成14年に水稲+畑作農家6戸、水稲+肥育牛農家1戸の7戸で、稲作生産組織「こがね会」を設立し共同作業で秋の刈取りを行う。刈取り後、当該経営が稲わらを収集し堆肥を散布して土地還元をしている。
5 地域活動
(1)消費者交流活動
  農場は地域小学校児童の見学の場であり更には、消費者交流の場として開放し、
それぞれの者を受け入れて肥育牛の生産現場を理解してもらう努力をしている。
  更には、関係機関・団体が行う研修事業に協力し、県内の肥育牛経営後継者の育成や中堅肥育農家の諸技術向上に貢献してきている。
(2)家畜排せつ物の適正化処理の推進
  平成13年~16年に村上市が関係者20名程で設置した、村上市家畜排せつ物対策協議会に村上市和牛振興組合を代表して参加し協議会会長に就任して、管内の畜産農家のふん尿処理実態の巡回指導、家畜ふん尿処理のあり方や堆肥需給体制の整備を検討するとともにこれらをリードして来た。
1 専業農業の確立
結婚当時の水稲180a、葉タバコ60a肥育牛50頭は、夫婦が力を合せてやらなければ出来ない農業規模であった。このときから「妻は労働者にあらず最良のパートナー」をモットーにして、互いに自分にないものを補い協力し合い、時には妻は多忙な夫を支えながら今日の基盤を築いてきた。
 
2 肥育経営前進の対応
(1) 生産コスト低減の実施
ア 飼養牛事故防止の工夫
  1頭当りの牛床を6.6㎡と広くしたこと、仕上げ期は飼槽を100cm程の間隔を置き1頭毎別に設置した。飼槽は、半切のドラム缶を止め金具で固定して丸太の置き台に設置している。飲料水は、ウォーターカップで飼槽と飼槽の間に設置してカップの給水パイプを孟宗竹に覆い牛の事故と破損の防止につなげている。
  牛床面積等は、県内で規模拡大を目指す農家の教科書的存在と言える。
 
 
 
イ 施設投資の削減
  肥育舎は、古電柱と自家労力を使って建設。堆肥舎は1/2補助付リースを使って低コストで建設した。
  機械は、保守管理を行いトラクタや粗飼料作機械23年、タイヤショベル13年と長く使って、施設機械投資の低減を実行している
ウ 支払利息の低減
  所属JAを窓口にしてスーパーLの低利資金を使い支払利息を低減している。
 
(2)適切な経営管理と青色申告書作成
  平成元年パソコンを導入し、ソフト開発会社の研修会で操作を学び経営管理を行い青色申告書の作成も行っている。
また、インターネットで情報収集し迅速な経営判断に役立てている。
3 枝肉の有利販売と枝肉品質向上対応
(1)地域銘柄「村上牛」の確立
  経営開始当初は、飼養技術も未熟であり、取引も生体取引が多く思うようには経営成果を上げられなかったことから、昭和62年に東京食肉市場に出荷したが、買参人からは、質・量の確保と地域銘柄を強く求められた。これを受けて平成元年に村上牛を立上げた、村上市和牛振興組合の組合長を平成6年から就任して、確立に努力し、平成15年には県内の統一ブランド「にいがた和牛」の実現に尽力して来た。
(2)村上牛統一給与配合飼料作り
  村上牛生産者間には、枝肉の質・量とも経営成果に大きな較差が見られ、生産者から合理的で統一マニュアルに添って給与出来る配合飼料作りの要望があり、平成11年に農協系統の協力を得ながら
肉用牛生産基盤安定化支援対策事業で給与飼料の設計・検討し、給与試験と検討を重ね、平成14年信越くみあい飼料(株)が村上牛配合飼料の供給を開始した。
 
4 耕畜連携の地域循環型農業を実践
当該経営は、収穫の済んだ圃場ヘイベーラで稲わら収集し、収集した圃場にマニュアスプレッタで10a当り凡そ800㎏の堆肥を散布して、安全性の高い稲わらを自給し、堆肥を土地に還元する「循環型農業」を実践している。
 
5 地域活動と後継者育成の実施
(1)家畜のふれあい体験と消費者交流会の実施
  地元小学生の情操教育として、当該農場を訪問し家畜とのふれあい体験で、訪れた小学生が教育実習として、訪問体験をHPに掲載した。そのHPを開いた県内テレビ局が取材に訪れ肥育牛の生産現場を放映した。また、消費者との交流を通して、生産現場から牛肉の安全性をPRして理解を得る努力をして来ている。更には、平成14~15年度新潟県の新規農業者支援事業や平成16年度にいがた和牛肥育名人認定事業の肥育名人に認定されて、県内和牛肥育経営の後継者並びに中堅経営者を研修生として、受け入れ県内肥育農家の経営生産技術の高位平準化に貢献している。

5.環境保全対策

(1)家畜排せつ物の処理・利用において特徴的な点

1 処理
(1)牛舎内でオガクズを敷料として使い、糞・尿を混合してボロ出し、堆肥舎に搬入する。搬入時水分凡そ60%程度である。
(2)搬入後1週間経過後切返しする。以後1週間ごとに2回の切返しを行い、最終切返し後7~10日で堆肥化処理を終了して、希望農家の圃場に運搬する。又は、一時堆積して保存する。
2 利用
(1)稲作生産集団の水田には、当該経営が稲わらを収集後、マニュアスプレッタで10a当り凡そ800kgを散布する。
(2)販売は当該経営者が2tトラック1台3,000円で販売し、圃場に配達する。
無償提供は、利用者が引取りに来る。堆肥は100%土地還元する。

(2)家畜排せつ物の処理・利用における課題

堆肥舎のスペースと敷料には不足がないので、ふん尿処理施設には特に問題はない。
1 冬期間は、積雪のために運搬が不可能になり堆積量が増える。
2 水稲生産集団の堆肥散布が、秋の長雨で全面散布が難しいことがある。
3 春先の農作業が始まると一気に需要が出てくる。堆肥が底をつくことがある。

(3)畜舎周辺の環境美化に関する取り組み

住居圏内からは、離れているので苦情発生は無いし、河川等の汚染は皆無である。
特に牛舎周辺の整頓と害虫の発生防止には気を配っている。管内農業共済組合で毎月1回牛舎消毒を実施している。適宜牛舎周辺の除草と殺虫剤散布等を行っている。

6.地域農業や地域社会との協調・融和のための取り組み

・地域の農業・畜産の仲間との共存のための青年農業活動
合併前の村上市和牛振興組合長、合併後のにいがた岩船農業協同組合肉牛部会長及び村上牛生産協議会のメンバーとして、生産者集団をまとめて、村上牛の確立と村上牛配合飼料給与マニュアル作りに努力して来た。併せて、生産者相互の融和に努めている。
・地域循環型農業の確立(耕種農家との結びつき)
耕種農家6戸と当該経営の7戸で、稲作生産集団「こがね会」を組織して保有する13 haの水稲収穫期の共同作業と収穫後の当該経営が稲わら収集と堆肥散布を行い、地域循環型農業を実践している。また、自身もユリ根の栽培地の堆肥施用と牧草100aの堆肥散布を行っている。
・遊休地の利用(転作田の有効活用)
転作は、集落単位で水田の30%ほどをブロックローテーション方式で大豆の栽培を行っている。また、15年には、前年までユリ根栽培を行っていた60aの畑のうち40aと借地60aを利用して、繁殖牛2頭の給与用牧草を栽培している。
・地域のリーダーとしての担い手育成(指導農業士としての活動、新規就農希望者の研修受入れ等)
日頃から、村上牛の先進農家としてグループ員や視察者に優れた生産技術を伝えて、担い手の生産技術向上に努めている。
平成15年に指導農業士に認定されて、同年新潟県が行う新規農業者支援事業で地域の肥育農家の後継者を研修生に受け入れて生産管理指導を行う。平成16年にはにいがた和牛肥育名人認定事業の肥育名人に認定されて、地域中堅肥育農家に技術研修指導を実施して県内肥育農家の生産技術の高位平準化を行った。
・地産地消への取り組み(産直所での加工・販売活動等)
JA、JA肉牛部会、市内レストランや割烹、食肉店、観光地の温泉旅館で組織する「村上牛友の会」は、村上牛をメニュー化し訪れるお客に提供して、地元産牛肉消費活動の推進を図っている。
・畜産への理解を深める活動(地域の子供達の見学受け入れ、消費者交流等)
毎年、地域の小学校児童の家畜とのふれあい農場として、見学を受け入れて子供達の情操教育の一助になっている。また、地域消費者グループやにいがた和牛推進協議会の消費者交流農場として、受け入れて現場から牛肉の安全生産の理解を得る努力を行っている。
・地域活性化のための活動(他地域との交流会や地域イベントの開催等)
村上市とJAが主催する農水産祭りに村上牛コーナーを設けグループ員が参加して村上牛のチラシの配布を行い、牛肉串焼やパック詰め牛肉の販売を実施した。

7.今後の目指す方向性と課題

1 今後の経営が目指す方向と課題
農業形態としては、水稲と黒毛和種肥育経営の複合経営を充実させていく。
(1)水稲は、集落営農の形を指向して、県内銘柄魚沼米に並ぶ「岩船米」の品質向上と生産販売の促進に努めていく。
課題は、土地流動の鈍化と構成員の高齢化が進んできている。
(2)肥育牛は、近い将来150頭程度の規模拡大を図って、現在他産業に就業している後継者が就農できる経営基盤強化を築いていきたい。
課題は、経営規模拡大に必要な施設費と回転までの素牛費、飼料費等の運転資金が多額に要すること。
2 課題の解決の考え方
法人経営への移行:個別経営では、労働者確保、活用資金等の経営運営に限界があることから経営を法人化して、法人経営が持つ特性を生かして経営の前進を図っていく。

8.事例の特徴や活動を示す写真

本人と最良のパートナーである奥さん
集落から見た牛舎の全景
低コストの肥育仕上げ牛舎(奥)
古電柱を使った手作り牛舎
仕上げ牛舎内部とドラム缶の飼槽
パイプ破損防止のため孟宗竹で覆ったウォーターカップ配管
昭和56年購入のトラクタ (いまだ健在)
ボロ出しを行ったふんを 堆積している堆肥舎
消費者交流会の実施状況 (農場の概要説明)
消費者交流会の実施状況 (給与飼料内容の説明)
公益社団法人 新潟県畜産協会
(代) 025-234-6781
FAX 025-234-7045
E-mail chikusan[あ]bg.wakwak.com
*[あ]をアットマークに変更して送信してください
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