1.地域の概況
山之内浩一氏の住む北魚沼郡広神村は県の南東部、福島県と群馬県の県境に位置している。圏域内を関越自動車道が縦断し、小出IC、堀之内ICが設置されている。また、近隣には上越新幹線浦佐駅もあることから、首都圏や県内主要都市までの交通は比較的便利となっている。
気象は西に魚沼丘陵、東を三国山脈に挟まれた魚沼盆地の北方に位置し、夏は高温多湿、冬は3mもの積雪がある豪雪地帯で、郡内には6つのスキー場が存在している。
自然豊かな地域で、魚野川、その支流の破間川、佐梨川、羽根川などが流れており、アユ、ハヤ、コイ、イワナ、ヤマメなど数多くの魚が生息しており、秋にはサケも遡上する清流である。また、隣接する入広瀬村・湯之谷村の山岳部は、越後三山只見国定公園に指定され、鳥獣類の宝庫となっており、山菜・キノコ類も豊富である。
農業部門では稲作が盛んで、厳しい自然条件の中で育った米は品質が良く、『魚沼コシヒカリ』としてその名を全国に知られている。
(1)産業構造(平成12年)
(単位:人)
区 分 | 総 数 | |||
第一次産業 | 第二次産業 | 第三次産業 | ||
就業人口 | 4,817 | 679 | 2,338 | 1,798 |
構 成 比 | 100.0 | 14.1 | 48.5 | 37.3 |
(2)粗生産額(平成12年)
(単位:百万円)
区 分 | 計 | 農 業 | 製造業 | 商 業 |
粗生産額 | 16,119 | 2,589 | 6,180 | 7,350 |
構 成 比 | 100.0 | 16.1 | 38.3 | 45.6 |
(3)農業粗生産額(平成13年度)
(単位:百万円)
農業粗生産額 | 米 | 野 菜 | 花 卉 | 畜 産 | その他 |
2,324 | 1,675 | 155 | 24 | 453 | 17 |
100.0 | 72.1 | 6.7 | 1.0 | 19.5 | 0.7 |
(4)畜産粗生産額(平成13年度)
(単位:百万円)
畜産粗生産額 | 乳用牛 | 肉用牛 | 豚 | 鶏 |
453 | 230 | 20 | 135 | 68 |
100.0 | 50.8 | 4.4 | 29.8 | 15.0 |
(5)飼養頭羽数
(単位:戸数・戸、頭数・頭、羽数・100羽)
区 分 | 乳用牛 | 肉用牛 | 豚 | 採卵鶏 | ||||
戸数 | 頭数 | 戸数 | 頭数 | 戸数 | 頭数 | 戸数 | 頭数 | |
県 | 450 | 14,300 | 520 | 19,000 | 250 | 213,000 | 70 | 46,520 |
広神村 | 10 | 370 | 4 | 89 | 3 | 1,990 | 1 | x |
2.経営管理技術や特色ある取り組み
1.牛群改良への取り組み
牛群検定事業に積極的に参加し、毎月の個体別乳量、乳成分、繁殖データ等を分析、検討して個体管理の徹底、飼養管理技術の改善を図って来ている。特に、後継牛の確保に当たっては母牛の能力を見ながら授精する精液を選定し、平成13年、平成14年に保留した後継育成牛の母牛の平均補正乳量は13年が
12,730㎏、14年が11,824㎏と高く、一層の牛群改良が図られている。その結果、経産牛1頭当たり乳量は9,723㎏と年々向上して来ており、今後、一層の牛群のレベルアップが期待される。
2.カウコンフォート向上への取り組み
昭和48年に建設した畜舎であり、牛床、通路が狭く、牛群改良に伴う高乳量化に対応できなくなって来たことから、牛を快適な環境の中で飼養するために、先進事例を参考にして、自己資金により以下の通り牛舎改善に取り組み、飼料の食い込み量のアップ、疾病、事故の低減に効果を上げている。
(1)牛床の改善
建設後30年近くを経過した畜舎であり、牛床の長さが160cmと短いため、牛の大型化に対応できずに肢蹄に疾病が発生して来たことから、バーンクリーナー上にスノコを設置し、牛床を延長した。それと同時に、牛床の弾力性を確保するため、30mmの牛床マットを自分で設置し、敷料としてのモミガラ利用、年2回の削蹄と併せ、低コストでの牛床改善を図り、疾病の予防を行っている。
建設後30年近くを経過した畜舎であり、牛床の長さが160cmと短いため、牛の大型化に対応できずに肢蹄に疾病が発生して来たことから、バーンクリーナー上にスノコを設置し、牛床を延長した。それと同時に、牛床の弾力性を確保するため、30mmの牛床マットを自分で設置し、敷料としてのモミガラ利用、年2回の削蹄と併せ、低コストでの牛床改善を図り、疾病の予防を行っている。
(2)飲水の改善
従来、2頭に1個のウォーターカップで給水を行って来たが、高乳量化により飲水量は増加したものの、水圧の低下により十分な給水ができない状況が生じて来たため、連続水槽を設置することにより、飼料給与後に牛が一斉に十分な飲水を行うことが可能となった。
従来、2頭に1個のウォーターカップで給水を行って来たが、高乳量化により飲水量は増加したものの、水圧の低下により十分な給水ができない状況が生じて来たため、連続水槽を設置することにより、飼料給与後に牛が一斉に十分な飲水を行うことが可能となった。
(3)飼槽の改善
改善前の飼槽はコンクリート製で凹凸のある飼槽であったため、飼料の食べ残しや腐敗等が発生し、 効率が悪かったためステンレス板を飼槽表面に合わせて施工し、衛生面の改善、残飼の減少、乳量の 向上に結びつけている。
改善前の飼槽はコンクリート製で凹凸のある飼槽であったため、飼料の食べ残しや腐敗等が発生し、 効率が悪かったためステンレス板を飼槽表面に合わせて施工し、衛生面の改善、残飼の減少、乳量の 向上に結びつけている。
3.豪雪地域による自給飼料生産への取り組み
魚沼コシヒカリ生産地域内にあり、冬期の豪雪と夏期の高温により飼料作物栽培条件が悪く、地域の酪農経営者が購入飼料中心の経営形態をとっている中で、自給粗飼料の必要性を早くから認識し、借地による飼料畑の確保に積極的に努め、トウモロコシ5.5ha、混播牧草3.8ha(個人、共同含む)の合計9.3haの作付けを行い、トウモロコシサイレージの通年給与を実現している。また、イネ科牧草が夏枯れにより定着しないことから、県内ではほとんど栽培されていないアルファルファのサイレージ利用にも取り組んでおり、60aの試験栽培の成功により、平成14年は2.6haに面積を拡大しさらに自給率の向上を目指している。
4.環境保全への取り組み
家畜排せつ物法が制定される以前の平成5年に地域の酪農組合で共同堆肥舎を建設して、切り返し方式の堆肥化処理に取り組んで来ており、生産堆肥の半量はトウモロコシ畑の基肥として経営内で活用し、半量を近隣の野菜農家に販売し、地力向上に貢献しているが、堆肥利用者の口コミにより販売先は約100戸に増加している。また、畜舎が住宅地内にあることから、毎日搬出される糞は牛舎に隣接した堆肥舎からすぐに、住宅地から離れた共同堆肥舎に運搬し、臭気の発生を極力防止して環境保全に努めている。
5.省力管理への取り組み
経産牛41.5頭と育成牛18.3頭の飼養管理と合わせて個人の飼料畑810aの栽培管理を行う必要があることから、飼養管理労力の軽減を図るためにリース事業を活用して自動給飼機を導入し、1日6回の配合飼料給与を行って、採食量の増大と牛にやさしい濃厚飼料の平衡給与に努めている。また、冬期は雪によりトウモロコシサイレージ取り出し作業に労力がかかることから、屋根付きの地下サイロを設置して雪による影響を回避すると共に、ホイストによる機械化した取り出し作業で労力軽減を図っている。
6.コスト低減への取り組み
施設、機械の保守管理を徹底し、長期間にわたって利用している他、中古品の活用、リース事業の活用によりコスト低減を図っている。また、コンピュータを早期に導入し、平成2年より経営管理ソフトを利用した決算処理を行い、問題点を把握して経営改善に取り組み、現在は借入金のない安定した経営を確立している。
3.経営・活動の内容
(1)労働力の構成
(平成15年7月現在)
区 分 | 続柄 | 年齢 | 農業従事日数 | 年 間 総労働時間 | 労賃単価 | 備 考 (作業分担等) | |
うち畜産部門 | |||||||
本人 | 34 | 347 | 347 | 3,102 | 1,350 | 搾乳、飼料給与、飼料作 | |
父 | 65 | 250 | 250 | 125 | 1,350 | 堆肥出し | |
家 族 | 母 | 56 | 347 | 347 | 2,082 | 1,350 | 飼料給与 |
妻 | 31 | 0 | 0 | 0 | |||
長女 | 5 | 0 | 0 | 0 | |||
次女 | 3 | 0 | 0 | 0 | |||
三女 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||
常雇 | |||||||
臨時雇 | のべ人日 66人 | 336 | |||||
労働力 合 計 | 3人 | 1,010日 | 1,010日 | 5,645 時間 |
(2)収入等の状況
(平成14年1月~平成14年12月)
区 分 | 種 類 品目名 | 作付面積 飼養頭数 | 販売量 | 販売額・ 収入額 | 収 入 構成比 | |
農業生産部門収入 | 畜 産 | 生乳 | 経産牛41.5頭 | 403,515㎏ | 42,006,990円 | 93.2% |
子牛・育成牛 | 27頭 | 2,293,729円 | 5.1% | |||
堆肥 | 200t | 500,000円 | 1.1% | |||
円 | % | |||||
耕種 | 水稲(全面委託) | 100a | 280,000円 | 0.6% | ||
円 | % | |||||
林産 | 円 | % | ||||
円 | % | |||||
加工・販売 部門収入 | 円 | % | ||||
円 | % | |||||
円 | % | |||||
円 | % | |||||
農 外 収 入 | 円 | % | ||||
円 | % | |||||
合 計 | 45,080,719円 | 100% |
(3)土地所有と利用状況
区 分
|
実 面 積
|
備 考
|
||||
|
うち借地
|
うち畜産利用地面積
|
||||
個
別
利
用
地
|
耕地
|
田
|
100a
|
a
|
a
|
全面委託
|
畑
|
560a
|
420a
|
550a
|
|
||
樹園地
|
a
|
a
|
a
|
|
||
計
|
660a
|
420a
|
550a
|
|
||
耕地以外
|
牧草地
|
260a
|
260a
|
260a
|
|
|
野草地
|
a
|
a
|
a
|
|
||
|
a
|
a
|
a
|
|
||
計
|
260a
|
260a
|
260a
|
|
||
畜舎・運動場
|
20a
|
a
|
20a
|
|
||
その他
|
山 林
|
a
|
a
|
a
|
|
|
原 野
|
a
|
a
|
a
|
|
||
計
|
a
|
a
|
a
|
|
||
共同利用地
|
600a
|
600a
|
600a
|
利用戸数:3戸
|
(4)家畜の飼養状況
単位:頭
品 種 区 分 | ホルスタイン 経産牛 | ホルスタイン 未経産牛 | ホルスタイン 育成牛 | ホルスタイン 子牛 |
期 首 | 39 | 7 | 12 | 4 |
期 末 | 43 | 6 | 12 | 2 |
平 均 | 41.5 | 8.0 | 10.3 | - |
年 間 出 荷 頭数 | 7 | 0 | 1 | 26 |
(5)施設等の所有・利用状況
種 類 | 構 造 資 材 形式能力 | 棟 数 面積数量 台 数 | 取 得 | 所 有 区 分 | 備 考 (利用状況等) | ||
年 | 金額(円) | ||||||
畜 舎 | 成牛舎 育成舎 | 木造2階 鉄骨平屋 | 330㎡ 104㎡ | S48.6 S54.6 | 9,410,000 1,450,000 | 個人 個人 | |
施 設 | 堆肥舎 堆肥舎 農具舎 車庫 飼料庫 農具舎 機械格納庫 移動車庫 農具舎 サイロ サイロ サイロ サイロ サイロ | 鉄骨平屋 電柱平屋 鉄骨平屋 鉄骨平屋 鉄骨平屋 鉄骨平屋 鉄骨平屋 鉄骨平屋 電柱平屋 ブロック ブロック コンクリート コンクリート ブロック | 145㎡ 300㎡ 50㎡ 23㎡ 46㎡ 40㎡ 50㎡ 50㎡ 50㎡ 85㎥ 58㎥ 78㎥ 60㎥ 54㎥ | S48.6 H5.1 S51.6 S52.6 S53.6 S58.6 H1.6 H2.6 H14.10 S53.6 S56.6 S59.6 S62.6 H2.6 | 3,270,000 11,616,505 510,000 400,000 1,860,000 675,000 2,075,000 450,000 1,100,000 3,297,000 310,000 1,300,000 1,100,000 600,000 | 個人 共同 個人 個人 個人 共同 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 | |
機 械 | ミルカー バルククーラー バーンクリーナ 自動給飼機 連続水槽 攪拌機 換気扇 トラクター トラクター トラクター トラクター トラクター トラクター マニュアワゴン ジャイロテッダ ヘイメーカー ロールベーラー ベールラッパ ジェットシーダ ブロードキャスター ヘイベーラー モアー バキュームカー コーンハーベスタ ブロアー タイヤショベル ホイルローダー ダンプ ダンプ ダンプ ワゴン 軽トラック | パイプライン 1,500㍑ チェーン 大宮製作所 亜鉛製 大脇式 30PS 25PS 60PS 65PS 22PS 40PS 2t 2m 100×100 2条用 200㍑ コンパクト 4連 2,500㍑ 1条刈 2t 2t 4t | 40頭用 1台 一式 40頭用 40頭用 6台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 1台 | H6.5 H13.7 H11.1 H8.4 H14.5 H3.2 H14.9 S61.6 S62.6 S63.6 H4.9 H14.4 H14.8 H1.6 H5.10 H5.10 H14.5 H14.5 S62.6 S63.6 H1.6 H3.6 H5.10 H11.8 H9.1 H1.3 H6.9 H8.6 H10.8 H12.7 H8.7 H12.12 | 5,594,000 3,359,000 752,600 3,927,500 700,000 300,000 373,000 800,000 600,000 1,500,000 3,986,100 300,000 1,200,000 1,205,000 97,087 97,087 2,711,600 1,149,700 720,000 185,000 1,800,000 1,000,000 1,095,000 1,800,000 666,000 3,400,000 6,102,900 1,257,200 500,000 525,000 1,825,000 885,200 | 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 共同 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 共同 共同 共同 共同 共同 共同 共同 個人 個人 個人 個人 個人 個人 個人 | 近代化リース 近代化リース 近代化リース |
(6)経営の推移
年 次 | 作目構成 | 頭(羽)数 | 経営および活動の推移 |
S35頃 S48 S52 S62 H1 H2 H5 H6 H8 H9 H11 H13 H14 | 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 水稲・酪農 酪農 酪農 酪農 酪農 酪農 酪農 | 経産牛30頭 経産牛35頭 経産牛35頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 経産牛40頭 | 父が酪農開始 30頭収容牛舎を新築して規模拡大 10頭分畜舎を増築して規模拡大、飼料畑3ha 本人、県立小出高校卒業し、酪農学園短大に入学 基盤整備により飼料畑が増加してくる 本人、酪農学園短大を卒業し、北海道の植田牧場で1年間研修 本人就農 共同堆肥舎建設 父が総合農協の組合長となり、水田を全面委託とする パイプラインミルカーをリース事業により更新 自動給飼機をリース事業により導入 本人結婚 長女誕生 次女誕生 牛床改善、牛床マット取替え バルククーラーをリース事業により更新 牧草畑が60aから260aに増加 ロールベーラー、ベールラッパ導入 連続水槽導入 三女誕生 |
(7)自給飼料の生産と利用状況
(14年1月~14年12月)
使用 区分 | 飼料の 作付体系 | 地目 | 面 積(a) | 所有 区分 | 総収量 (t) | 10a当たり 年間収量 (t) | 主 な 利用形態 (採草の場合) | |
実面積 | のべ 面積 | |||||||
採草 採草 採草 | トウモロコシ アルファルファ・リード混播 (収穫は60aのみ、200aは新規播種) リード主体混播 (共同草地600aの個人分) | 畑 畑 畑 | 550a 260a 120a | 550a 260a 120a | 自己 130a 借地 420a 借地 260a 借地 120a | 260t 24t 48t | 4.7t 4t 4t | サイレージ 1番草:乾草 2番草:乾草 3草:乾草 4番草:乾草 (15年からは全てラップサイレージ) 1番草:乾草 2番草:乾草 3草:乾草 |
計 | 930a | 930a | 自己 130a 借地 800a | 332t |
4.家畜排せつ物処理・利用方法と環境保全対策
(1)家畜排せつ物の処理方法
①固液分離処理の状況
全て分離
②固形分の処理(堆肥化処理等)
牛舎よりバーンクリーナーにより隣接の堆肥舎に搬出後、畜舎周辺の臭気を低減するため、すぐに住宅地から離れた共同堆肥舎に運搬して切り返し方式により堆肥化を行う。副資材としては、無償で収集して来るエノキダケの廃オガとモミガラを利用し、3ヵ月程度で製品となった堆肥を春と秋を中心に2tダンプ1台、5,000円で近隣農家に販売すると共に、トウモロコシの基肥として経営内で活用している。
③液体(尿・汚水)の処理
尿は尿溜めに貯留後、バキュームカーにより汲み上げ、すべて牧草畑の追肥として利用している。
(2)家畜排せつ物の利活用
①固形分
内 容 | 割合(%) | 品質等(堆肥化に要する期間等) |
販 売 | 50 | 切り返しにより3ヵ月で堆肥化 |
交 換 | ||
無償譲渡 | ||
自家利用 | 50 | 切り返しにより3ヵ月で堆肥化 |
そ の 他 |
②液体分
内 容 | 割合(%) | 浄化の程度等 |
土地還元 | 100 | 牧草畑へ原液で追肥として利用 |
放 流 | ||
洗 浄 水 | ||
そ の 他 |
(4)評価と課題
①処理・利活用に関する評価
家畜排せつ物の処理問題がクローズアップされる以前の平成5年に、いち早く管内の酪農組合で共同堆肥舎を建設し、生産された堆肥をトウモロコシ畑の基肥として活用しているほか、尿も牧草の追肥として活用し、安定した自給粗飼料生産体系を確立していることは評価に値する。
②課 題
近年、経産牛乳量の向上に伴い、排せつされるふん量や必要な副資材量が増加して来ているが、豪雪地域という立地条件で冬期間は堆肥の利用が不可能なため、春までの堆肥のストック場所の拡充が今後必要になったら適切に対応してもらいたい。
(5)畜舎周辺の環境美化に関する取り組み
・ 畜舎が住宅地内にあることから、悪臭の発生源となる畜舎から搬出された牛糞は、すぐに住宅地から離れた共同堆肥舎に運搬して悪臭低減を図っている。
・ 畜舎周辺の整理、整頓に心がけ、廃材、廃棄部品等は置かないようにして環境美化を図っている。
・ 畜舎等の木材にはこまめにクレオソートを塗り、木材の腐食防止に努め美観の維持を図っている。
農協事業等を利用し花や樹木を畜舎周辺で栽培して景観維持に努めている。
5.後継者確保・人材育成等と経営の継続性に関する取り組み
本人は34歳とまだ若く、子供が5歳、3歳、0歳とまだ小さいことから、当面、後継者の確保についての問題はない。畜舎が住宅に隣接していることから、子供は牛に親しめる環境で育てられている状況にある。
6.地域農業や地域社会との協調・融和についての活動内容
・ 本人は地域の酪農青年部長、酪農組合副組合長、ヘルパー組合役員を歴任し、酪農関係の取りまとめ役として活動しており、平成9年には青年農業士に認定されている。また,父は総合農協の組合長として地域農業の発展に貢献している。
・ 転作田を活用して村の農業公社が栽培・調整している飼料用稲ホールクロップサイレージの利用農家として、製品を購入して育成牛に給与し、外国からの輸入乾草の購入量の節減を図ると共に、安全な国産粗飼料の積極的な利用により地域循環型農業の発展のために尽力している。
・ 小規模、高齢農家が耕作を中止し点在していた耕作放棄地が土地改良により集積されたので、それらの畑を積極的に借地して飼料畑として活用し、地域資源の有効利用を図っている。
・ 農協が生協との間で実施している消費者交流に参加し、畜産への理解を深める努力を行っている。
7,今後の目指す方向性と課題
・ 飼養管理面では、成牛舎の天井が低く換気状態が良好とは言えないので、防暑対策としてトンネル換気方式の導入を検討している。
・ 飼養牛の高乳量化に伴い発生する疾病、事故を防止し、長寿、連産性の高い牛群を整備することを目標として、繁殖管理を徹底し余裕を持ったより健康な牛作りを行う。
・ 子供がまだ小さく、妻が酪農経営にまだ参画できない状況にあり、父母の高齢化に伴い労力不足が予想されるので、飼料作物はトウモロコシから牧草一本の栽培への転換も視野に入れている。ただ、トウモロコシの安定的な収穫機が開発されれば、栄養収量の高いトウモロコシ栽培を継続する方向で検討している。