養豚経営 巻町 斎藤春敏
1.経営管理技術や特色ある取り組み
(評価される内容とそれに取り組んだ動機、背景、経過、その取り組みを支えた外部支援等)
(1)計数管理による経営改善
- 該当経営は日々の養豚経営に関する記録の全てを管理日誌に記帳している。その内容は夫婦がそれぞれ記帳している。見落としがちになりやすい、豚の移動状況や健康状態等が正確に記録されることで、現状の飼養管理状況が的確に把握でき、それぞれの処置や対応が迅速に行われ経営改善につながっている。
(2)高い繁殖技術ときめ細かい育成管理
- 繁殖雌豚の品種はLW・WLが主体で繁殖成績は高位に安定している。
- 繁殖雌豚の基礎豚は系統豚「ニホンカイ」で、これをベースに自家育成豚を作り出している。なお、雄は人工授精(大ヨークシャー)を利用している。
- 母豚の飼養管理は、日々の個体管理の内容が把握できるように、個体毎に整理されている。特に、種付け後の再発情のチェックは厳しく対応している。
- 肥育豚の日々の個体管理がしっかりしており、肉豚事故は少ない。
(3)畜舎施設の改善と創意工夫
- 畜舎機能の創意工夫に努めている。繁殖成績が良好なことから飼育面積が不足がちであるが、肥育豚飼育のためハウス豚舎の設置や子豚育成施設の導入など飼育環境の改善の常に前向きに取り組んでいる。また、畜舎内の温度・湿度を一定に保つ工夫として、細霧システムと大型扇風機を活用した独自の空調方法を開発するなど、利用等の面での創意工夫が見られる。
(4)自然素材を利用した豚の健康管理
- 自然素材を利用した豚の健康管理に努めている。飼料にはビタミン・ミネラル強化に加えて木炭粉末を添加している。飲み水には、木酢酸を混入し薬剤に頼らない飼育豚の健康管理に努めている。このことで、抗生物質等の薬品の使用はほとんどない。
(5)健全経営への展開
- 現在まで施設改善を図ってきているが、それらの資金はほとんど自己資金でまかなっており、長期資金についても資金面で余裕のできた平成7年には、22,000千円の繰り上げ償還を行っている。また、時間をかけて計画的に無理なく規模拡大してきたことで、自己資本比率が高く経営は安定している。
(6)記録・記帳の励行
- 夫婦で分担して生産技術、経営に関する記録・記帳を励行し、良く整備されている。
- 経営主は繁殖部門での記録を個体別に行い、繁殖台帳に転記している。肥育部門では肉豚の飼育日数や出荷体重を計量したものを記録している。
- 奥さんは費用など経営に関する一切の記録業務を担当して、収支決算を行っている。
(7)グループ活動
- 飼料並びに生産資材の購入にあたっては、グループ(あすなろ会)で協同購入を行い、購入単価の引き下げに努めている。
- 生産物の販売は銘柄豚「熟成豚」として付加価値販売を行っている。
- 「あすなろ会」並びに西蒲・燕養豚経営研究会に参加し技術的・経営的交流会と情報交換会を定期的に行っている。
2.経営・活動内容
(1)労働力の構成
続 柄 | 年齢(才) | 労働力(人) | 家畜の労働割合(%) | 畜産の主な担当 | 備 考 |
本人 | 47 | 1.0 | 83.0 | 養豚経営全般 | |
妻 | 45 | 1.0 | 83.0 | 養豚経営全般 | |
母 | 69 | 0.6 | 0.0 | 養豚経営全般 |
(2)土地利用
区 分
|
水 田
|
普 通 畑
|
備 考
|
面 積
|
290a
|
5a
|
|
(内借地)
|
60
|
|
(3)家畜の飼養状況
区 分 | 種 豚(雌) | 種 豚(雄) | 育 成 豚 | 子 豚 | 肉 豚 |
期 首 | 55頭 | 6頭 | 6頭 | 83頭 | 545頭 |
期 末 | 57 | 4 | 8 | 163 | 548 |
平 均 | 56 | 5 | 3 | 100 | 568 |
年間出荷量 | 1,284 |
(4)経営・技術実績
区 分 | 経営・生産実績 | 新潟県指標値 | |
経 営 の 概 要 | 家族労働力員 | 1.4 | |
種雌豚平均飼養頭数(頭) | 56 | ||
肥育豚平均飼養頭数(頭) | 568 | ||
年間肉豚出荷頭数(頭) | 1,284 | ||
所得率(%) | 28.2 | 15.0以上 |
区 分 | 経営・生産実績 | 新潟県指標値 | |||
生 産 性 | 繁 殖 | 種雌豚1頭当り年間平均分娩回数(回) | 2.48 | 2.43 | |
1腹当り分娩頭数(頭) | 12.1 | 11.0以上 | |||
1腹当り子豚哺乳開始頭数(頭) | 11.4 | 10.9 | |||
1腹当り子豚離乳頭数(頭) | 10.3 | 9.5 | |||
子豚育成率(哺乳~離乳)(%) | 90.4 | 90以上 | |||
種雌豚1頭当り年間子豚保留頭数(頭) | 24.3 | 23.0 | |||
肥 育 | 種雌豚1頭当り年間肉豚出荷頭数(頭) | 22.9 | 23.0 | ||
肥育豚事故率(%) | 8.1 | 7.0以内 | |||
肥育開始時 | 日齢(日) | 28.4 | 24 | ||
体重(kg) | 7.0 | 6以上 | |||
肉豚出荷時 | 日齢(日) | 188.5 | 185 | ||
体重(kg) | 113.2 | 115 | |||
平均肥育日数(日) | 160.1 | 161 | |||
出荷豚1頭1日当り増加体重(kg) | 0.663 | 0.65以上 | |||
肥育豚飼料要求率 | 2.83 | 2.80 | |||
トータル飼料要求率 | 3.1 | 3.3 | |||
枝肉1kg当り平均価格(円) | 398 | ||||
枝肉格付「上」以上率(%) | 56.8 | 60.0以上 | |||
種雌豚1頭当り投下労働時間(時間) | 53.6 |
3.家畜排せつ物処理方法と環境保全対策
(1)家畜排せつ物の処理方法
1.固液分離処理の状況 |
全て分離 |
2.固形分の処理(堆肥処理・関連施設) |
堆肥舎において、モミガラを混入し10日体積、その後ショベルローダーで切返しを行う。これを7日間隔で5~6回切返し製品化する。(概ね45日前後で堆肥化する。) |
3.液体(尿・汚水)の処理 |
・活性化処理方式により処理 繁殖豚60頭一貫経営処理施設 BOD濃度 100ml/1 放流水 SS濃度 100ml/1 |
4.堆肥の活用 |
自家利用10%、販売50%、無償譲渡40% |
(2)環境への取り組み
畜舎周辺に花木を植えるなど環境美化に配慮し、特に畜舎周辺の整理整頓に注意を払い、廃材や廃物はすぐに片付けるようにしている。
この背景として農政事務所を中心に地域の関係者がまとまり、管内の畜産農家対象に環境美化コンクールを毎年実施している。このため、関係機関の巡回指導や畜舎周辺の花木の植樹を積極的に勧めていることもあり、当該経営は毎年美化コンクールの上位入賞を果たしている。
この背景として農政事務所を中心に地域の関係者がまとまり、管内の畜産農家対象に環境美化コンクールを毎年実施している。このため、関係機関の巡回指導や畜舎周辺の花木の植樹を積極的に勧めていることもあり、当該経営は毎年美化コンクールの上位入賞を果たしている。