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【12年度】フリーストール体系の導入と転作田の活用による酪農専業経営の確立

三島郡三島町 中村 日出男
当経営は自給飼料基盤が脆弱な本県酪農経営の中にあって、転作田の積極的な活用と飼料畑の集積により経産牛1頭当たり20.6aの飼料作物栽培を行い、堆肥の経営内有効利用を図りながら、環境問題への適切な対応を実施している事例である。特に、経営面で、県内では比較的早い平成元年に有限会社組織として法人化を図り、平成3年にはフリーストール・パーラー搾乳体系を取り入れ、規模拡大と省力管理、飼養牛の健康管理に努め、乳量・乳成分の安定化を図っている。一方、飼養管理面においては、コンピュータが一般的に普及する前から導入を行い、牛群管理・経営管理に活用すると共に、現在は情報収集、情報発信手段としての活用も始めている。また、乳用牛群能力検定事業にも積極的に参加し、乳牛の改良に努めると共に、酪農経営に必要な様々な技術を有し、地域のみならず県内の酪農発展に尽力している。さらに、地域内においても、小学校、高校の研修生受入農家として農業体験場所を提供すると共に、地域酪農組合の理事としても活躍する等、技術・経営内容の他、地域貢献面でも非常に優れている。主な取組みは以下の通りである。
 
①県内では比較的早い、平成3年にフリーストール飼養、パーラー搾乳による規模拡大を行い、省力管理と飼養牛の健康管理に努めている。
②牛群検定結果、血液検査を継続して実施し、その結果を活用して牛群の改良、乳成分の向上を図っている。
③自家水田を全面的に転作し、飼料作物生産に活用すると共に、飼料畑の積極的な借地により経産牛1頭当たり20.6aの飼料畑を確保し、堆肥の自家有効利用と自給飼料増産に努めている。
④人工授精、受精卵移植、削蹄、機械修理等は出来る限り自分で行い、コスト低減に努めている。
⑤早くから、コンピュータを活用した牛群管理、経営管理を実践しており、平成元年には法人化(有限会社)を行っている。
⑥地域の集団転作田における飼料作物の収穫を2戸共同で請け負い、調和を図っている。
⑦酪農組合の理事として、地域に貢献すると共に、「地域の農業を考える会」が実施する農業視察で小学生の研修の受け入れや、長岡農業高校の研修生の受入れ等を行っている。

2.経営の形態

酪農専業経営

3.経営の概況

(1)家族人員および労働力の構成

ア 家族人員数  4人
イ 農業従事者数  2人
表-1
続柄
年令
労働力
農業従事の程度
家畜飼養割合
飼養経験年数
主な担当部門
本人
48
1.0
100
100
27
酪農
41
1.0
100
100
19
酪農

(2)経営地の面積

表-2
区分
水田
飼料畑
山林
転換畑
面積
ー(ー)a
450(一)a
700(550)a
200(一)a
1,350(550)a
 
カッコ内借地

(3)乳牛の飼養規模

 1 経産牛
表-3
区分
期首
導入
未経産より
頭数
59
0
14
販売
廃用
期末
延頭数
平均規模
14
3
56
20,372
55.8
注)搾乳牛48.6頭(延べ17.728頭)

2 未経産牛
表-4
区分
期首
導入
育成より
経産へ
販売
期末
延頭数
平均規模
自家産
導入
頭数
15
0
13
14
0
1
13
4,911
13.5

3 子牛・育成牛
表-5
区分
期首
導入
生産
頭数
17
0
57
未経産へ
販売
死亡
期末
延頭数
平均規模
14
32
2
26
7,667
21.0



 
4 建物施設・器具
表-6
区分
形式
面積・数量
区分
形式
面積・数量
畜舎
成牛舎
成牛舎
パーラー舎
乾乳舎
育成舎
木造平屋
木造平屋
木造平屋
木造平屋
パイプ式
18×10m
10×18m
7.2×19.8m
10.8×32.4m
12.6×19.8m

トラクター
トラクター
ハーベスター
ディスクモアー
ジャイロレーキ
マニュアスプレッダー
ライムソワー
ロールベーラー
ベールラッパ
ベールグリッパ
トレーラ
ショベルローダー
ホイールローダー
ダンプ
トラック
48ps
54ps
ピックアップ


1,500kg
200cm
100cm
80~100cm
120cm

0.2m3
0.4m3
2台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
施設
堆肥舎
堆肥舎
堆肥舎
堆肥舎
倉庫
倉庫
倉庫
木造
木造
ハウス式
ハウス式
木造
木造
木造
7.2×7.2m
7.2×7.2m
12.6×18.0m
7.2×18.0m
9.0×9.0m
7.2×9.0m
5.4×4.5m
機械
ミキシングパーラー
ミルクメーター
バルククーラー
8頭シングル

2,100L
一式
8台
1基

4.経営の推移

表-7
経営全体酪農部門

S28
45
46
48
49
50
58
H1
3



5
8
10

両親が経産牛1頭より酪農を開始する
総合資金650万円を借り入れ、牛舎を新築移転し、規模拡大する
サイロ1基(128m3)構築し、トウモロコシサイレージ調製開始
本人就農する
サイロ2基(54m3)増設
サイロ2基(54m3)増設
経営診断受診(2年間)
有限会社(資本金500万円)組織とする
牛舎の内部改造と増設により、フリーストール・パーラー搾乳体系とし、
規模拡大を図る
トウモロコシ栽培から牧草栽培に切り替え、
コンプリートフィード体系を中止する
育成舎兼乾乳舎、堆肥舎新築
ロールベーラ、ベールラッパを導入し、ロールラップサイレージ体系とする
育成舎、堆肥舎新築

5.経営実績

(1)経営成果

表-8
区分
単位
平成11年
指標
経営規模



経産牛
55.8
未経産牛
13.5
子牛・育成牛
21.0
合計
90.3

経産牛平均産歴
2.7
3.5以上
経産牛平均分娩間隔
14.2
13.0以内
経産牛平均種付回数
2.1
2.0以内
経産牛平均体重
kg
587
620以上
経産牛処分率
30.5

搾乳1頭当たり産乳量
kg
9,676
経産牛1頭当たり産乳量
kg
8,428
8,500以上
濃厚飼料1kg当たり産乳量
kg
2.88
脂肪率
3.98
3.60以上
無脂固形分率
8.75
8.70以上
体細胞数
千個
198
200以下



経産牛1頭当り濃厚飼料給与量
kg
2,922
3,150
経産牛1頭当り粗飼料給与量
kg
5,207
4,550
粗飼料中の稲ワラ割合
0
給与養分の
充足率
DCP
133.6
TDN
101.1
体重に対する
給与割合
全給与
3.8
3.4以上
粗飼料
2.4
2.0以上



経産牛1頭当り作付実面積
20.6
TDN自給率
5.6
10a当り収量
青刈作物
kg
4,311
永年牧草
kg
4,160
5,000以上
1kg当り
生産費
生草
埋草
13.46
乾草

経産牛1頭当り飼養管理時間
時間
103.9
120
10a当り飼料栽培時間
時間
4.3
14








牛乳1kg当り
生産原価
89.31
総原価
103.06
牛乳1kg当り
自家労賃控除後
生産原価
70.21
総原価
83.96


乳飼比
46.1
40以下
うち経産牛当りの乳飼化
41.2
35以下
(注) 1 飼料生産における1kg当り生産費は自家労貨控除額で示した。

(2)牛群構成

(ア)産歴の分布
表-9
区分
給与状況(経産牛)
合計
平均産歴
1
2
3
4
5
6
7
8
在房牛
15
20
8
8
4
 
1
 
56頭
2.5産
処分牛
3
4
2
1
5
1
1
 
17頭
3.5産
合計
18
24
10
9
9
1
2
 
73頭
2.7産
割合
24.7
32.9
13.7
12.3
12.3
1.4
2.7
 
100%
 
 期首2.3産 期末2.5産

(3)飼料給与

(ア)粗飼料の給与体系
表10
区分
飼料名
給与状況(経産牛)
期間内
年間換算
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
給与量
1日当り
風乾物
換算
1日当り
ビートパルプ
3.0

 
60,000kg
2.95kg
60,000kg
2.95
牧乾草
11.3

 
9.1

 
204,081
10.02
204,081
10.02
牧草サイレージ
 
4.9(2.2)

 
57,875
4.9
26,457
1.30
←――――14.3――――→
290,538
14.27
(イ) 給与量(経産牛)
表-11
区分
給与量
年間1頭
当り
1日1頭
当り
ADM
割合
TDN
割合
体重に対する
ADM
備 考
濃厚飼料
163,040kg
2,922kg
8.0kg
35.9%
43.0%
1.36%
 
粗飼料
290,538
5,207
14.3
64.1
57.0
2.44
 
合 計
453,578
8,129
22.3
100.0
100.0
3.80
 
(ウ) 飼料養分の充足率
表-12
 
飼育日数
又乳量
DCP
TDN
備考
1日又kg当り
1日又kg当り
必要量
維持
20,372
0.367
7,477
4.353
88,679
体重 587kg
妊娠
2,644
0.209
553
1.596
4,220
 
産乳
470,271.9
0.0477
22,432
0.326
153,309
脂肪率 3.98%
追加分
0.070695
 
2,046
 
16,294
 
合計
 
 
32,508
 
262502
 
給与量
購入
41,636
250,290
 
自給
1,790
14,987
 
合計
43,426
265,277
 
充足率
133.6%
101.1%
 
自給率
4.1%
5.6%
 
 注)濃厚飼料1kg当たり産乳量・・・・・・2.88kg

(4)飼料作物生産利用状況

(ア)飼料作物生産利用状況
表-13
作物名
作付面積
10a.当たり収量
合計収量
利用区分
サイレージ
イタリアンライグラス
300a
2,307㎏
69,200kg
69,200kg
(22,500)
スーダングラス
(300)
5,300
159,000
159,000
(50,000)
イタリアンライグラス
800
3,075
246,000
246,000
(80,000)
混播牧草
50
4,160
20,800
20,800
(8,750)
計・平均
1,150
4,160
495,000
495,000
(161,250)
(イ)飼料作物1kg当たり生産費
表-14
区分
種子費
肥料費
減価償却費
修繕費
燃料費
その他
生草1kg当たり
0.18
0.11
1.78
1.29
0.15
0.87
4.38
埋草1kg当たり
0.57
0.35
5.46
3.97
0.45
2.66
13.46
 注)埋草は水分60%換算         (単位:円)
公益社団法人 新潟県畜産協会
(代) 025-234-6781
FAX 025-234-7045
E-mail chikusan[あ]bg.wakwak.com
*[あ]をアットマークに変更して送信してください
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