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【10年度】●受精卵移植に夢を託した肉用牛祖牛の生産組織活動

組織活動部門
新潟北部地域受精卵移植利用研究会 岩船郡荒川町大字切田
会長 宮野 俊
発表者 高橋 輝雄

1.研究会の構成員

(1) 構成員の区分と数
酪農家24名、肉用牛農家15名、集団1名、技術者(獣医師)3名、計43名。
(2) 農家の家畜飼養数
乳牛625頭、黒毛和種繁殖牛64頭、黒毛和種肥育牛577頭。
(3) 構成員農家の範囲
新潟県北部地域(北蒲原郡、岩船郡)在住の酪農家、肉用牛農家。
(4) 構成員農家の特徴
ア.畜種
酪農経営、和牛肥育経営
イ.経営形態
繁殖和牛を飼養する和牛農家と乳牛を飼養する酪農家がET研究会を組織し、和牛農家から生産された優良血統の受精卵を酪農家の乳牛に移植、生産された子牛を和牛農家に環流する。
ウ.経営の特徴
受精卵移植技術を利用し、一頭の優良雌牛が生涯かけて残せる子孫よりも数倍もの子孫を短期間に生産できる技術を畜産経営の中に取り入れ和牛肥育農家が飼養する銘柄「村上牛」を供卵牛とすることにより優良な肥育素牛を生産することで、高品質(高価格)の肥育牛を数多く出荷することができ激しさをます産地間競争での生き残りと経営の安定を図る、一方酪農経営に於いては牛乳の生産拡大のみならず子牛販売代金も収入の大きな柱になるよう経営改善を図っている。

2.研究会の目的

優良系統牛の増産及び改良速度向上等の技術の確立により、会員と地域畜産のより一層の発展を目指し、会員相互の協力により受精卵移植技術が各会員に円滑に推進され、和牛肥育経営での銘柄牛の産地化の確立による付加価値生産、酪農経営では副産物収入である子牛収入の増加を行って経営の安定を図る。

3.研究会設立の推移と活動可能にしたポイント


 (1) 設立の推移

年度

設立の推移

摘要

平成2年



平成2年11月


平成3年4月



 平成4年

開業獣医師が独自で受精卵移植に取り
組む。
酪農家、肉用牛農家の有志で「はまな
す会」を結成し黒毛和種供卵牛を導入。
広域的組織の結成の要請があり受精卵
移植研究会設立準備会設置。

新潟北部地域受精卵移植利用研究会が
結成。
同研究会規約と受精卵移植実施要領を
制定。
町村補助金交付、国・県の助成事業を
 導入。

受精卵移植についての関心が深まる。
受精卵移植の研修会開催で普及を図る。


乳牛借り腹による和牛子牛の生産が始ま
る。

受精卵移植に係る借り腹制度、費用負担
区分の定める子牛の哺育・育成マニュア
ルの作成。

研究会運営費及び受精卵移植費用助成を
うけ採卵・移植推進を図る。
出生子牛の市場評価及び肥育牛枝肉評価
 か出始め徐々に成果が上がり評価が高まる。



 (2) 活動のポイント

ポイント事項

1.和牛の産地と酪農地帯が近いところに存在していること
2.和牛農家、酪農家が互いに信頼し合い、受精卵移植による子牛生産の目的を理解し合っていること
3.熱心なリーダーと経験豊かな技術者が活動の中心となっていたこと
4.組織を積極的に支援する行政・団体があること
 5.金銭の取りきめをはっきりさせておいたこと

4.研究会の組織体制と支援状況


  1 組織関連図

新潟北部地域受精卵移植利用研究会運営図

 



 

 受精卵移植業務、支援期間・団体

 ◎堀家畜医院

  1. 受精卵移植業務実施・採卵・凍結処理(施設) 
  2. 供卵牛・出生子牛の飼養管理指導
  3. 専門技術員として研究会運営に参画

◎下越家畜保険衛生所

  1. 採卵業務への人的援助
  2. 資材供給、採卵・凍結処理(施設) 

◎北日本酪農農業協同組合

  1. 事務局、事務局員配置
  2. 運営費助成

◎黒川村、中条町、荒川町

  1. 運営費助成


 2 借腹制度

受精卵


 

肥育牛出荷

(受精者)
 酪農家(乳牛)

(供卵者)
 和牛農家(供用卵)

還流、子牛育成・肥育

出生子牛
 (生後3ケ月齢還流)


子牛市場
 (繁殖・肥育素牛出荷)


    

 

和牛農家で生産された受精卵を酪農家が飼養する受卵牛に移植し、生まれた子牛は受精卵を提供した和牛農家に定められた料金で環流する
 (基本は90日令、雄90~100 200千円 雌80~90 180千円 雌雄体重還流、日額雌雄、早還流制度等あり)

5.活動の成果


(1) 受精卵移植実績
  1 採卵成績

区分

5年度

6年度

7年度

8年度

9年度

採卵頭数

19

28

45

52

53

採卵数

234

194

490

480

432

正常乱数

169

97

215

174

135

Aランク卵数

129

59

128

131

100

1頭当りAランク数

6.6

2.1

2.0

2.5

1.9


   2 移植成績

区分

5年度

6年度

7年度

8年度

9年度

移植頭数

113

132

140

150

128

受胎頭数

59

72

72

61

54

受胎率

52.2

54.6

51.4

40.7

42.2


   3 借腹契約による和子牛環流実績

平成 年度

区分

頭数

平均日齢

平均体重

備考

6年度



合計・平均

26頭
22頭
48頭

95.7日
96.7
96.2

95.1kg
81.7
89.0

 

7年度



合計・平均

30頭
25頭
55頭

93.0日
93.0
93.0

101.8kg
87.0
95.1

 

8年度



合計・平均

27頭
22頭
49頭

92.1日
90.5
91.4

95.1kg
79.4
88.1

 

9年度



合計・平均

19頭
22頭
41頭

96.3日
102.2
99.5

93.8kg
91.0
92.3

 



(2) 受精卵移植の効果
  1 酪農経営

年度

販売子牛の
ET子牛%

環流子牛

乳用種初生
平均価格

交雑種初生
平均価格

備考

頭数

1頭平均価格

総額


7年度
8年度
9年度

12.5
11.1
9.3

55
49
41

170,804
163,578
192,227

9,394.200
8,015,300
7,881,700

41,000
41,000
30,000

86,000
76,000
68,000

 


  2 肉用牛経営
    ア.肥育の販売成績

年次別

項目

7年

8年

9年

受精卵牛

受精卵以外
の牛

受精卵牛

受精卵以外
の牛

受精卵牛

受精卵以外
の牛



出荷頭数
導入体重
出荷体重
出荷月齢
DG
枝肉重量
4等級以上率
 枝肉単価


kg
kg

kg
kg

 円

8
162
672
30.0
0.70
417
100
2,867

71
290
702
28.7
0.71
436
78.9
2,204

19
154
725
28.7
0.81
451
94.7
2,518

46
284
713
28.2
0.73
440
69.6
2,008

22
149
735
28.9
0.80
455
90.9
2,547

37
288
737
28.8
0.76
456
70.3
2,215


出荷頭数
導入体重
出荷体重
出荷月齢
DG
枝肉重量
4等級以上率
 枝肉単価


kg
kg

kg
kg

 円

8
178
551
28.8
0.56
342
87.5
2,132

15
241
599
29.7
0.59
371
60.0
1,889

5
86
592
29.5
0.65
368
80.0
1,681

28
238
622
29.1
0.64
385
78.6
2,036

17
83
624
28.8
0.69
387
94.1
2,364

11
262
626
29.1
0.69
387
63.6
2,046


    イ.子牛の販売成績

年度別

受精卵による生産子牛(平均)

市場平均

備考

頭数

雌子牛価格

雄子牛価格

雌子牛価格

雄子牛価格


7年度
8年度
9年度

16
6
16

452,428
518,605
725,900

462,598
515,000
550,500

290,789
293,987
327,678

375,907
384,017
406,097

 

6.今後の方向と今後の課題

(1) 今後の方向
技術者の経験と供卵牛飼養管理技術の向上によって、採卵数及び優良卵数の確保と受胎率の向上が期待され、また、借腹牛確保は可能であり今後も優良子牛の増産が継続的に進められるものと期待され、各方向の一段の協力体制の強化を期待する。
(2) 今後の課題
ア.酪農経営の課題
(ア) 肥育農家に環流する子牛の仕上りで基準価格にプラス・マイナスが生ずることから、価格を高め、経営にプラスアルファーを多くするためにも子牛の育成技術の向上が望まれる。
(イ) 安定的に子牛を生産するために、移植牛の受胎率の向上が望まれる。
イ.肉用牛経営の課題
(ア) 優良卵の採卵が出来るためには、供卵牛の体調維持が欠かせないことから繁殖牛としての飼養管理技術の早期修得が望まれる。
(イ) 酪農家からの子牛は3ヶ月齢の若齢が環流されてくることから、8~9ヶ月齢の肥育に仕掛るまでの間の飼養経験が未熟であるため飼養管理技術の習得が望まれる。
ウ. 推進するための課題
(ア) 受精卵移植により安定した子牛生産を行っていくには、採卵から移植、さらには飼養牛管理指導に及ぶ経験豊かな技術者の存在が絶対条件であり、現在は研究会員である獣医師がこれに当たっている。更に一段の推進を図るには技術者の養成が求められてきている。
(イ) 毎年環流する子牛価格について、研究会会員間に話し合い、取り決められてきていることから、継続的に話し合いがなされることが望ましい。
(ウ) 地域畜産発展のため和牛農家を組合員とする総合農協も参加した受精卵移植組織としたい。
公益社団法人 新潟県畜産協会
(代) 025-234-6781
FAX 025-234-7045
E-mail chikusan[あ]bg.wakwak.com
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